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[コメント] 血染の代紋(1970/日)

フカサク港湾再開発ヤクザもの最終作。梅宮鶴田もいらない気がするが、スラム立ち退き話の駆け引きが『解散式』より詳細なのが本作の美点。撮影好調、すでに被写体がフレームからはみ出し続ける躍動感全開、比べれば60年代アクションはこじんまりして観えるだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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冒頭、昭和40年、暴力団取締り実績、解散組織475団体3万人、自然消滅組織525団体4万人と紹介されるが菅原文太の襲名披露新組長の浜保組。横浜。海運業辞めてコンビナート建設拡張という業務の転機。倉庫の権利が貰えるかもしれない。それで埋立地のスラム街の立ち退き(「追っ立て」と呼ばれる)を請け負ってしまう。

彼等は国有地に居座っているだけ(不法占拠)だが補償つける、という条件が語られる。「これはきたねえ仕事だ」とスラム出身の待田京介に組を辞めさせたりしている。スラムは籠城戦。離散者、自殺者、立退料目当ての「居残り屋」長門勇など、いろんな人物像が描かれる。在日コリアンの云い回し、投石。いつものように出所する鶴田が説得に加わり、立退き進み始める。

そこへ渡辺文雄の大門組が内田朝雄と裏で手を握り介入してくる。彼等はスラムを夜襲して、スラムの面々は激怒、報復に文太の組襲う。その最中に渡辺の部下がスラムの中心人物をドサクサ紛れに刺し殺して車で逃げ、この車とすれ違いにパトカーが来て文太の組の一斉検挙、という恐ろしくも笑ってしまうスラップスティックコメディが抜群のタイミングで展開する。上手いものだ。これ、よくある手口なのだろうか。

渡辺に寄宿する梅宮(なぜか東京流れ者(65)が口笛で吹かれ、河川敷のボクシングジム跡地のバラックで文太と再会する)はどうでもよくて、鶴田と宮園の再燃もどうでもよいように思われる。内田を刺し殺すのを待っていたかのように蜂の巣にされる鶴田。「これで全部ですね」「向こう先の見えねえ連中ばかりだ、当たり前だ」と渡辺。

スラムには重機が入る。赤ヘルメットの部下が目立って活躍し、半焼した組を訪れた文太はその赤ヘルを拾い上げているから、学生運動とのリンクが意識されていたのだろう。整地され新コンビナート建設予定地の看板が上がる。

本作は江東区枝川町でロケされている。1940年の中止になった東京オリンピック用地確保の名目で在日コリアンが集団移住させられた処で『狼と豚と人間』と同じロケ地。当時はゴミの山だったが、本作当時はすでにスラムが撮れる最後の時代で、やむを得ずセットを組んだ部分もある由(一坂太郎「フカサクを観よ」)。

横浜の設定。警察の前の入江に船が寿司詰めになっているショットがある(文太を宮園が待っている件)。ここも横浜らしく、船上生活者のエリアだったかも知れない。内藤誠が脚本で参加。ジャジーな劇伴はこれが木下忠司かと驚く格好良さ。

(評価:★4)

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