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[コメント] サイドカーに犬(2007/日)

げに麗しき冗談関係。三木聡かと思った。小物への冗談交じりな薀蓄で話転がす作劇がそっくり。原作がそっち方面なのだろうか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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内気な子供に猥雑な世界を見せてまわるオジサン。チャップリンとキッドとか、無法松と敏雄とか、寅さんと満男とか、血縁のあるなし含めて映画では王道。このタイプ好きだ。叔父−甥の関係を「冗談関係」とする未開社会の風習があるらしい。「互いに揶揄や卑語を交わしたり,相手の物を盗んだりすることが許されている関係」。親子の関係を半歩離れて社会を知るための仕組みなのだろう。上記映画群と直接じゃないが類縁性があると思う。

本作もこのバリエーション。古典的な骨格に現代のリアルを嵌め込んでとても感じいい。内気のよく似合う松本花奈の採用で八割がた成功だろう。いい相棒を得て竹内結子が泳ぎ回っている(なんで彼女を貶すコメントが多いのだろう。芸能記事に無縁なのでよく判らない)。

三木聡似と書いたが、品のあるなしについて微妙な味のなる竹内の造形は、その方面に長けた根岸の演出によるものに違いない。彼女の涙の件は、なんで彼女が古田新太ごときに、という我々の常識を覆す落差の感覚著しく、余りにも美しい純愛にもらい泣きしそうになった。

男連中が麻雀、子供がパックマンと宿題の最中に、竹内が台所で文庫本読んでいる(「ヴィヨンの妻」という処が深い。根岸の次回作)件など、とても感じが出ていていい。トミーズ雅はいつも通り味があり、旅先の樹木希林は往年の武智豊子そっくり。

収束に山場を設けず、半歩前で終わりにするのもチェーホフっぽくて良好。この玄人好みのテク、投資と回収の大きい映画では使いにくかろうに。本編は逆算すればバブル前の話なのだろう(怪しい外車の商売も当時ならでは)が、バブル後の竹内はどうなったのだろう。貧乏に苦しんでいないのだろうか。それを隠したラストじゃないのかと気を揉ませる、というのは深読みが過ぎるだろうか。

なお、石油の埋蔵量は、採掘技術の発達とサンドオイルの実用化により昔より増加して算定されている。これ除いても80年代にあと30年分と云われたというのは多分間違い、そんな短い訳はない。

(評価:★4)

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