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[コメント] 雲の上団五郎一座(1962/日)

フランキーは絶好調で勧進帳が白眉、水谷良重を五拍子で抱きよせるネタなども面白い。本格的な構図を決め続ける撮影もリッチ。青柳信雄の東宝喜劇人生集大成の意欲作だったのかも知れない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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しかし、アチャコの「中風」ギャグは見苦しい。菊田一夫のコメディは『がめつい奴』(60)などもなかなか激しい差別ネタがあったものだった。

本作は一座の出し物が原因で脳卒中になったということなんだろう、言語障害になり、片手を間断なく痙攣させている。一座が大阪の企業と契約すると途端に治っているから、真面目に取れば脳卒中ではなくて神経的な病状だったのかも知れないが、看病する妻の清川虹子はご丁寧に「中風が治った」と補足している。映画館はビミョーな空気が流れ続けた(治ったときはウケていたが)。時代だから仕方ないし、脳卒中など誰でもなる可能性があるのだから差別的とまでは云えないのかも知れないが、ギャグにするのは今や不快、後世に残すべき映像遺産とは云えまい。

我々世代は子供時分にこういう興味本位の表現を見て始めて病気、病状を知ることがとても多かったが、あれは教育の貧困としか云いようがない。この高齢化社会、老人の一般的な病状ぐらい義務教育の視聴覚教材で適切に教えるべきだ。今はもうできているのだろうか。

それと、座長団五郎役の榎本健一に元気がないのはとても気になる。東宝のお祭り企画だからと無理に登場願ったように見えるが、彼が地味でフランキーが突出するのではオールスター映画になっていない。彼の科白のシーンはほとんどバストで抜かれていて全体に溶け込んでいない。何かコメディの歯車が回っていない感じがする。息子さんを失くし脚を失ってしまったのはこの年の由。

その他、三木のり平由利徹たちはいつも通り。八波むと志は本作がぢ評作らしいが、私は余り好きな役者でない。ドサ廻りが大阪で認められてハッピーエンドというぬけぬけとした収束はお約束ぐらいのものか。宝塚映画、カラーワイド。

(評価:★3)

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