コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] イノセンツ(2021/ノルウェー=デンマーク=フィンランド=スウェーデン)

こういうホラー作品なら苦手な人にも見てほしいですね。子どもは純粋だなんだとか言いますが、こういう作品を見ると性悪説とかもあながち間違いじゃないなって思います。
deenity

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







わたしは最悪。』の脚本を手掛けたエスキル・フォクトが監督を務める本作。北欧の集合団地を舞台にしたサイキックホラー作品として気になったので劇場鑑賞してきました。

北欧ホラーといって思い浮かぶのはアリ・アスターの『ミッドサマー』ですかね。あのなんとも言えない居心地の悪さみたいなものが本作にも通ずるように感じました。明確な霊現象やらジャンプスケアとかではなく、じっとりとまとわりつくような居心地の悪さ。特に耳にまとわりついて離れないあの重低音がとにかく緊張感を引き立てていましたね。鍋のふたをくるくる回して徐々に止まっていくだけの音になぜあそこまで緊張を覚えるんだろうとか。あとは団地を平面俯瞰で映すシーンで、遊んでいる子たちの中で一人だけじっとこちらを見つめている不気味さとか。目立ったものではなくとも、終始そういう演出がずっと続いていくので、ホラーとか苦手な人でも見やすい作品かなと思いました。

そしてその根底にあるのが、本作においては子供たちの純粋無垢さゆえの悪意。子どもの頃に誰しも経験したことがあるようないたずら心。あの子は痛いって言わないからちょっとつねってやろうとか、意味もなく面白半分に虫を踏みつぶしてみようとか。大人になるとある程度ブレーキがかかるような、悪とわかっていてもやってみたいという好奇心みたいなものが本作には全面に出ていて、それが共感を生むというか居心地悪さの根底にあるのだろうと思います。

だから本作はあくまで子どもの中だけで完結していきますし、サイキック要素ってのもある種の子どもながらの豊かな想像力のメタファーみたいなものだと思いました。 ちょっとしたケンカや親からの注意にイラっとし、感情に任せて「あいつなんかああなっちゃえばいいのに。」という思いが具現化していくといかに歯止めが利かなくなるかという恐ろしさ。

母親が言う「何かあったときは大人を頼ればいい。でも大人だったら自分で解決しなければね。」という言葉の危うさ。互いに大人で常識や良心や罪悪感や、そういった付加要素もいろいろ鑑みた上で行動できる者同士なら成り立つであろう理屈。じゃあそれが成り立たないような子どもの世界でやはり自分が何とかしようとすることのリスク。負の連鎖。恐ろしい以外の何物でもないですね。

正直見てられないようなシーンもいくらでもあって、やはり猫のくだりとかサッカー少年のくだりなんかはきついものがありますが、例えば猫を落とすところまでは面白がっていて、いざ落としたら事の重大さに気付いて、みたいなこと。自分にもあった気がするな。そしてまた、そこで引くのではなく、「殺した方がいいかな」って言っちゃうような子もまたいたような気がします。 何にせよ、そこを着眼点としてホラー作品に仕上げたのが見事でしたね。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。