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[コメント] 孤狼の血 LEVEL2(2021/日)

よりバイオレンスな描写には脂が乗ってましたね。このシリーズはこういうのが見たかったんだよ。それを引っ張ってたのは兎にも角にも鈴木亮平の演技に他ならないでしょう。
deenity

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待ちに待ってた『孤狼の血』の2作目。今年見た中で自分の中での今のところ暫定一位が前作だったので、前作を劇場で見れなかった後悔と今作こそは劇場で見たいという期待でずっとうずうずしていました。

そして鑑賞。いや、まあ力のあるバイオレンス描写にはより拍車がかかりましたね。昨今では非難されがちの表現もガンガンに攻めていくのが本作の見所の一つ。それが嫌なら批判なんかせんと見んといてくれ(笑)こういう世界を味わえるのもやっぱり映画の醍醐味だと思います。

その中核を担っていたのが鈴木亮平演じる上林ですね。この人の演技は今まであまりちゃんと見たことがなかったのですが、マジで怖いオーラが出まくってましたね。あのドスの効いた声、一睨みで射すくませるような目、逞しい体躯、背中越しのカットは抜群の存在感があって、まさに最恐の男という称号に相応しい敵役だったと思います。 後の展開も含めると個人的には『ダークナイト』のジョーカーと上林を重ねるところがあって、ちょっとお門違いかと思いましたが、ラストはまさにそんな感じでしたかね。 悪のカリスマ的存在とはまた違いますが、あの圧倒的な存在感はさながらジョーカーとも言えなくはないかと思います。

とはいえ本作の主人公はやはり松坂桃李演じる日岡であって、前作で役所広司が演じた大上亡き後の3年間、広島ヤクザ組織を取り仕切っていたのがまさに日岡でした。尾谷組と五十子組を手打ちにしたのは実質大手柄であり、上手い具合に綱渡りを続けていると自負していたわけですね。 ただ、実際のところ県警にもヤクザにもよく思われてはいないわけで、風貌ばかりは大上のような不良刑事になれども、堅気を守るための孤狼にもなりきれず、日岡に気づいた大上と違って県警のスパイには気づかず、新聞記者にすら日岡の方が悪いと見透かされる始末。 だからそういう意味では本作の日岡は大上の後を追いかけつつも、未だに捕まえきれない孤狼の姿を模索している、言わば『ダークナイト』のバッドマンであり、主人公でありながらも霞んだ存在感にはなってくるのかなとも思います。その一方で、その絶妙なラインの演技を続けた松坂桃李くんはいい塩梅の演技でしたね。

もう一人、キーマンとしては村上虹郎演じるチンタというキャラクターがよかったですね。 日岡と上林の間にいたチンタですが、やはり注目は上林との対峙シーンですよね。初っ端から目に対する異常なこだわりを持つ上林にとっては残飯食って生きてるような惨めなチンタみたいな気に食わなかったでしょうし、その後も執拗にチンタにこだわっていたのは同じように二世という境遇にあったが故のことだと思うので、タレコミ以前にそういうところだろうなと。 それにしてもエンコのシーンはマジで緊張感がえぐかったですね。あれをあの表情でいなせる上林が相当やばいんですけども。

語りたいシーンは山のようにありますが、やっぱりラストの日岡VS上林の衝突ですよね。この二人もまた大上の教えを継ぐ者VS五十子の息子という構図。カーチェイスのスタート辺りから明らかに二人だけの世界に入ってきますね。二人が死闘を繰り広げ共鳴していく様はめちゃくちゃ熱くなります。 ただ、ラストで彼が撃ったのはやはり孤狼を目指したからであり、たとえシンパシーを感じようが貫かないといけないんですよね。バディだって信じられないんですから。 ラストの狼を追いかけるシーンは完全なるメタファーですよね。本作を通してずっと狼を追いかけ続ける形になった日岡が今後どう返り咲くか。次回作があるってことで期待できそうです。

全体を通しての熱量も凄まじいですが、やはりよくできた作品だと思います。本作でのバディ役である中村梅雀演じる瀬島も「本当に悪くて救えない奴は正義のフリしてる奴だ」的な言葉がありましたが、まさに伏線ですよね。あの展開は何となく匂わせてはいましたが、やはり衝撃的な展開でしたし、何より上林というキャラクターを見るだけでも見応えたっぷりで本作も十分楽しめました。

(評価:★5)

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