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[コメント] 動物農場(1954/英)

寓意のための物語なので、寓意をはみ出る驚きこそないものの、「共産主義の理想郷」崩壊メカニズムの解説の手際は鮮やかで目が離せない。カタストロフが約束された物語と知っていても、ディズニー真っ青の猛毒デフォルメの容赦なさや、暗殺や簒奪、選民、動員、虐殺といったモチーフの淡々と着実・整然とした挿入が、抜き差しならない緊張を醸成。そして歴史は繰り返す(繰り返してはならない)。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「次には〇〇が来るな」といった「予感」の成就は映画鑑賞における「失望」につながりやすいが、カタストロフを目指して「着実」に積み重ねられるシステマティックな展開がむしろ良い方向に作用。怖い。

最初の革命蜂起をアジテートした「老賢者ブタ」の風貌と、劇終盤の蜂起を主導する老いたベンジャミン(ロバ)の風貌が相似していること。この描写がかなり効いており、「ベンジャミン後」の新たな簒奪者の登場を予感させ、ラストの革命成就の爽快感は希薄。この「くりかえし」に寄せた描写はかなり優れていると思う。

その大義がいかにまっとうに見えるものであっても、それが継がれる過程で劣化したり変質したりすることはままあること。この愚行を忘れ去ることなく忌み嫌い続けることが、21世紀以降も変わらず政治の使命の一つとなる。現代の私たちの「大半(でもないかもしれないが)」はこの光景を「ばかばかしい」と切り捨てることが出来るが、この光景が「過去」に追いやられたとき、その瞬間が「のっぴきならない危機」となる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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