コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] イングロリアス・バスターズ(2009/米=独)

タランティーノのセンスと技量の結晶による新境地を見たGOOD作
junojuna

 タランティーノの映画的センス。それは彼の映画的記憶から繰り出されるボキャブラリーの妙というものであるが、本作においてはそれらリファレンスの旺盛な援用と抑制の利いた修辞、またはその逆も然り、かつ技法への粘り強いこだわりを顕示することに成功したひじょうに豊穣な映画空間であった。これまでのフィルモグラフィにおいてもタランティーノ独特の緊迫した人物関係の配置は、ありえそうにもないフィクションの上で、やや斜に構えるポジションで成立せしめていたものであったが、今回は擬似的な形をとりながらもシリアスな歴史群像に題材を求めたことが、確かな技量を開陳することにつながった。これまである種タランティーノがゴダールの方言的亜種であったフェイクな存在感も、本作の結晶によって新たなるステージへ突入したことを伺わせてひじょうに興味深い。一方で‘しゃべり’の人、タランティーノである所以の冗長な映画尺は目を瞑るよりないが、次作が楽しみなことは変わりない。としても‘自然児’タランティーノであることだから、期待もほどほにというところが妥当だろう。返金率0%保証。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)shiono[*] 林田乃丞[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。