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[コメント] バトル・ロワイアル(2000/日)

僕はまだ成人してないし、かといって子供というような歳でもない。よってこの映画で起こっていることは、大人や子供との対比としては、他人事だ。この利点を生かして、この度傍観者の立場で純粋にこの映画を楽しませてもらいます。不謹慎すか?笑
かねぼう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







僕が自分の子供を持ったら、この映画に高い評価を与えるという行為ができるだろうか?その答えは分からない。おそらく心の中で高い評価はするだろう。だが、それが行為として表面化するかどうかは分からない。できれば子供にはこのような映画は見てほしくないし、万が一影響を受けた高校生が暴挙に出ないとも限らないので、R指定も15から18まで引き上げるべきだと、感覚的には思っている。

だが、小学生の頃から大人に「見てはいけない」と口酸っぱく言われてきた身として、いざこの映画を見た後になって一つ思うのは、こんな映画にマジになってどうする?ということなのだ。善を説く映画がしばしば“観客に媚びている”とか“偽善”などど否定され、真に善を説くには無力であるとされるのと同様、この映画は真に悪を説く力など持っていない。この“浅さ”を見ただろうか?殺人を“カッコよく見せる”演出も、教育により何年もかけて矯正されてきた獣性を少年の内に呼び覚ますにはあまりにも陳腐だ。また、何らかのテーマがありそうな雰囲気を醸し出そうと一応はしているが、正直焦点がブレまくっているし、大体そんなもの41人の死と並べてみればノミ程の大きさもあるまい。

偽悪だ。真に悪を説くには、この作品はあまりにも戯れである。

むしろ大したテーマが感じられなかったのは、この映画にとって良い方向に働いているかもしれない。戦争物で死んでいった兵士を美しく丹念に描く事は、一方で意図せぬ戦争賛美に陥る危険性を孕むものだ。一人ひとりの生徒の思いを丹念に描き、この作品に何か重みが加わった場合、それがこの作品の登場人物たちに憧れを抱かせる原因にもなりうる。テロップで何となく余韻を残すぐらいが丁度いいのだ。

以上から、この作品は浅い故に、R指定によってその描写の影響力に対する責任は十分取っているという傍観者の勝手な意見を述べさせてもらったが、次は“浅さ”を強調しつつも、この映画を高く評価する理由である。“浅い”ならば批判するのが世の常であろうが、、、この場合の“浅さ”は上で述べたように、結果的にはその内容を中和するには最適の浅さだからである。つまりバランスが良いのだ。深作の野性的な荒々しさを感じさせる演出にも魅かれる。

そして最大の理由は、そもそも“この原作を映画化する”という発想の段階でこの作品は明らかに自分の容量を超えていたという事実である。これほどの不謹慎さにはなかなかお目にかかれない。詰まる所僕は、この作品の“存在”自体に打ちのめされてしまってて、言ってみれば、悪を憎む故に悪を求めるという僕の天邪鬼な欲求がこれ一本で1年分ぐらい満たされてしまった気がするのだ。

(誤字修正で更新されてしまいました。投票してくださった方すいません)

(評価:★4)

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