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[コメント] 少女ムシェット(1967/仏)

ブレッソン映画の「厳しさ」は決して相対的なものではない。それ以外にはありえない簡潔で絶対的な所作(アクション)の厳しさ。その厳しさは私たち観客が涙することさえも許さない。
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**ネタバレ注意**
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ムシェットが同級生の少女らに泥団子を投げること。密猟者に押し倒され、「アァ……、アア……」と声を上げながら背中に腕を回すこと。ごろごろと土手を転がること。それらのアクションとしての絶対性。

この映画にある種の「甘さ」を持ったシーンがあるとすれば、それは遊園地のカート・シーンだけだろう。むろんこのシーンにしても、そのアクションやカッティングは凡百の映画の数百倍は厳しく、またそこに表出しているものも「幸福感」と云うにはあまりにも厳しいものなのだが、本作の他の場面と比べれば確かに「甘い」と云うこともできる。だから私たちが涙することができるシーンはそこしかない。後は涙を拭い、何が起ころうとも目を逸らさずに画面を見つめつづけ、ブレッソンの、ムシェットの「厳しさ」を受け止めること。それは甚だ困難で辛い体験だが、同時にそれこそが観客にとっての幸福であることは云うまでもないだろう

(評価:★4)

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