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[コメント] ワンダーストラック(2017/米)

キャロル』監督の作としては何とも散漫な仕上がりだが、子役ひとつを見てもやっぱりアメリカ映画こそ世界一だと得心するには足る。アフロヘアっ子のジェイデン・マイケルがひたすら可愛く、ミリセント・シモンズの仏頂面と破顔の落差にも動揺する。オークス・フェグリーくん、あなたは髪を切りなさい。
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**ネタバレ注意**
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云うまでもなくオークス・フェグリーとミリセント・シモンズ(=ジュリアン・ムーア)の物語である。そのラストカットが、フェグリーとムーアにジェイデン・マイケルも交えて撮られているというだけで、トッド・ヘインズ演出の不始末の数々も水に流したくなる。

そうとは云い条、「散漫な仕上がり」「演出の不始末」について敢えて付言するなら、「企みすぎた脚本に演出の処理が追いついていない」ということになるだろうか。〈無声映画〉〈聴覚の喪失←落雷→停電→暗闇(←博物館の秘密部屋)→懐中電灯/インスタントカメラのフラッシュ〉〈ジオラマの鳥瞰的眺望≒宇宙的視線(←“Space Oddity”)→「見上げる」ラストカット〉など、「相対的な視覚の特権化」に収斂するこれら諸モティーフが、(映画が「読む」媒体であるとするならこれでもじゅうぶんだろうが)生理に訴えかける演出としては結実していない。「映画」は暴力的に観客に襲い掛かる媒体であると私は信じている。

 ところで、ゑぎさんが『シェイプ・オブ・ウォーター』評で映画における「聞こえる唖者」「喋れる聾者」「聾唖者」について触れてらっしゃいましたが、ここでのフェグリー少年はまさしく「喋れる聾者」に該当するでしょう。聾者になったばかりのため手話を読むことができないという特殊事情はあるにせよ、なるほど彼が結ぶ(結ばざるを得ない)ような類のコミュニケーションを、確かに映画は稀にしか持っていなかったかもしれないと思い及びました。

(評価:★4)

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