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[コメント] フェアウェル さらば、哀しみのスパイ(2009/仏)

配役次第で随分と色が変わりそうな映画だ。熊のようなエミール・クストリッツァは強固な意志の持ち主ではあっても決して思考が硬直した堅物ではなく、よくユーモアを解する。「共産主義国家の要職」や「スパイ」といった肩書が持つイメージに縛られない人物造型のニュアンスが映画の足場を確かにしている。
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**ネタバレ注意**
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諜報活動に関してはズブの素人であるギョーム・カネに対するクストリッツァの要求はまったく無茶苦茶なものなのだから、カネにはもっとコメディアンはだしのうろたえ芝居を見せてほしかったところだ(ウディ・アレン的な。眼鏡つながり)。事態の異常ぶりをコメディとして見せて大いに笑わせながら真っ当なスパイ・サスペンスもきっちりと成立させる、というところに演出家の腕の見せどころがあると思うのだが、これは私の趣味を押しつけすぎかもしれない。

趣味の押しつけ、ということでもう一点付け加えるならば、やっぱりこれではアクションが少ないと思う。終盤におけるクストリッツァと息子の面会シーン、面会室の仕切りが降り切る直前にクストリッツァが披露するローリング・アクションは実に感動的なのだから、アクション勘が鈍い演出家というわけでもないはずだ。

 劇中、ふたつのシーンにわたってロナルド・レーガンが見ている映画はジョン・フォードの『リバティ・バランスを射った男』。事実に反するものとしての、しかしそうあってほしいと人々が願うものとしての「伝説」が生成する過程を正確に描いた映画ですが、果たしてこれはどういう意味合いで引用されたのでしょうか。

(評価:★3)

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