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[コメント] 28週後...(2007/英=スペイン)

徹頭徹尾スリリングなアクション・ホラーにアドレナリン出っ放し。主要人物のヒロイックなキャラクターの、その感情の激しさに比例する壮絶な暴力描写に心がかき乱される。サバイバルアドベンチャーとして見ると距離的スケールの点でコンパクトであるが、随所に演出の工夫が施されていてテンションが減速しない。
shiono

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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アメリカ映画の米軍が、マッチョなメッセージ性を抑えた描写になってきている現在、この映画の軍隊はヨーロッパにおける歴史の積み重ねを構成するひとつの史観としての積極性を感じる。私の場合、空港と軍人の描写は大航海時代の港、コードレッドで暗いホールに詰め込まれた民間人はホロコースト、続く狙撃隊による群衆への無差別発泡は1972年北アイルランドの「血の日曜日事件」、空軍によるナパーム弾投下はNATOのコソボ空爆と脳内でリンクし、その時代の流れは映画への深みとなって印象付けられた。ロンドン中心街の空撮からして、長きに渡る人々の営みと愛着を感じさせるに十分であり、多大なリスクを冒してでも復興させようという人間の気持ちもまた素直に理解できるものであった。

このジャンルの金字塔、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』は資本主義と無神論のなれの果てであり、ヴードゥー教を起源に持つアメリカ大陸の産物であるのにたいし、本作はこうした歴史観(疫病からして14世紀のペスト大流行を連想させる)や、ヴィジュアルイメージとしての草原を疾走する集団=近代サッカー発祥の国、あるいはセント・アンドリュースやウィンブルドンといったモチーフの想起、といったことからも、ああヨーロッパだなぁと感じさせた。そうしたこともひっくるめて、ハリウッド映画とは明確に異なるタッチを楽しめる作品である。プログレっぽい音楽もいい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)おーい粗茶[*] JKF[*] けにろん[*]

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