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[コメント] フリーダム・ライターズ(2007/米=独)

崩壊した地域の高校に赴任した新米国語教師の今も続く実話に基づいた映画。映画の出来以上に現在も続く実話である事の衝撃は強い。もっと宣伝されてもっと沢山の人に見られてもいい映画だ。主人公のその後を知るとさらに実在の人物の凄さを感じる、という事であえて5点。
paburo57

**ネタバレ注意**
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 「フリーダム・ライターズ」を観た。アメリカの高校での実話。黒人暴動後、地域の高校が差別撤回政策により、地域に住む誰もがその高校に入れるようになり、そこは人種の坩堝になる。人種ごとに反目し合い、貧困、家庭崩壊、ドラッグ、銃、人種差別がその背景にある。  そんな高校に国語教師として着任したエリンは、過酷な過去を持つ子ども達がある待った1年生のクラスを持つ。3年前は優秀校だったのに今は最底辺校になったこの高校の教師は彼女の熱意に冷淡で非協力。学ぶ意欲のないものは何をしても無だ。3年生になるまでに、みんな学校を辞めていくからというのがその教師たちに考え。  そのエリンが、生徒たちに日記を書かせることで、学ぶことの大切さ必要性を伝え、最低クラスを、生徒たちが、このクラスは「我が家」いえるほどにして行くという、4年間の高校生活のうちの2年間のお話。

 エリン役をヒラリー・スワンくが好演。見ごたえのある映画になっている。あと、足りないとするなら、日記を配るに至るまでの、授業中の困難がいまいち伝わってこなかったことだ。時間的都合で描ききれなかったのかもしれないが、実話であるならそれを描くことでもっとリアリティが生まれたのではないだろうか?

 その後のエリンを調べてみた。彼女は、4年間この子ども達を担任して、日記を書かせ、それが3年生の時に出版される。生徒共々ワシントンDCに見学旅行にも行き、本の表彰でニューヨークにも行き、そして4年の時にはオランダにアンネ・フランクの住んだ家を訪ね、アウシュビッツにも行く。  その後、大学で教鞭をとり、Freedom Writers財団を設立し、寄付やグッズの販売などの資金により、講演会、高校生がドロップアウトしないように奨学金などの助成をし、また、エリンのフリーダム・ライターズ・メソッドを学びたい教師のために5日間のワークショップをアメリカ全土で開き、彼女の活動は一つの教育運動として広がっている。  おそらく、就学困難な状況にある高校生を救うためには、自分ひとりが教師としてなすべきことよりも、同じ様な志の教師と広く手を結び、また、直接生徒を援助できる方法、さらには政策的な力も必要となったのであろう。彼女はどのレベルであるかは未確認であるが議会の議員の選挙にも立候補したようである。

 作文による指導は古くは日本の「生活綴り方運動」にそれを見ることができるが、この映画を観てそれを思い出した。理想を持つこと、言葉にすること、そして、理想は現実を動かすこと。これは古くはソクラテスの時代から哲学の世界では常識とされ、最近では精神世界ブームによって一般に広められ、また埴谷雄高がその著書「死霊」によって実現を目指したものである。  言葉で考え伝え合う人間の言葉の持つ力をもう一度認識させてくれた映画であった。

(評価:★5)

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