[コメント] 麒麟の翼 劇場版・新参者(2011/日)
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原作未読です。
ストーリーの骨格部分を抽出して考えれば東野圭吾らしさが良く出ている作品だと思う。最終盤に当たるミステリ部分のネタ晴らしで繰り広げられる言わば「お涙頂戴」シーケンスはその際たる部分である。個人的に、その箇所については悪くない出来になっていると思う。
しかし、本作は致命的と取られても仕方がない欠点が2つある。
1つは、ミステリーとして考えた時に伏線の張り方が稚拙に過ぎる点。
青柳武明(中井貴一)の葬儀で糸川(劇団ひとり)と青柳悠人(松坂桃李)らが何やら話しているのを見つめる加賀(阿部寛)を正面から撮るというカメラワーク、日本橋での捜査中、八島冬樹(三浦貴大)の写真を偶然見た巫女さんの反応、ストーリー上突然日本橋の麒麟像前に現れる吉永美重子(秋山菜津子)。
「ハイ、これ伏線ですよー。後で関わってきますよー。」と観客に提示してしまうのを「丁寧」と誤解してはいないか。観客の画面に対する集中度が比較的薄めになりがちな2時間ドラマであればその方針は確かに丁寧と評価されるだろうが、観客が押しなべて集中している映画ではこの方針は過剰サービスでしかないし、ミステリーとして展開が読める事にもなるのであまり得策とは思えない。
もう1つは、最終盤に至るまでの話があまりにもたもたし過ぎという点。
原作がこうであればしょうがない部分もあるが、個人的に東野圭吾のストーリーテリングはこれほどスマートでない印象がないので、以下はその前提で述べる。
それぞれのキャラクタの過去描写を色々と織り込んでいて、確かに人物理解という点を考えればその効果が分からないではないが、その度にストーリー進行が止まるので、もう少し整理してもよいのではないかと思う。中原香織(新垣結衣)と八島の描写がどうにも気になった。
その他、青柳遥香(竹富聖花)というキャラクタは必要か?母親と統合しても問題ないキャラクタにしか見えず、彼女の登場シーンは軒並み切れるだろう。
金丸(田中麗奈)が絡む加賀の父親(山崎努)がらみのエピソードをはじめとするドラマ視聴者への「サービス」はもうしょうがないと思うので触れないが、この辺りで余計な時間を使い過ぎの様に思う。
という事で、まぁ、ドラマのお客さんには楽しめる作品にはなっていると思うので、そのつもりでご覧いただければと思う。
にしても、妊娠3か月って言われずに気づけるものなのかなぁ・・・。
(2012.2.1 tohoシネマズ上大岡)
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