殺人を犯し服役中の兄。そんな兄の存在は、弟の人生に暗い影を投げ落とす。犯罪者の弟という目で世間は弟を見る。自分が人を殺したわけじゃないのに。目が出てきたお笑い活動も続けられず、住む先も転々とする。仕事も兄のせいで異動を命ぜられた。好きだった彼女にも兄の事が知れ、大金をもらって分かれる羽目に。そんな時、いつも沢尻エリカが寄り添ってくれていた。主人公の弟の立場からすればこんなストーリーだろう。

世間の弟に対する視線は限りなく冷たく、くどい位に弟を不幸が襲うも、何故か深く弟に感情移入出来ない自分がいた。何故か。弟の兄に対する気持ちや、苦悩は彼の言動や態度を見ていれば分かるものの、登場人物の根底まで描ききれていないその脚本に問題があるのではないか。また、演出もどこかワンパターンで、不幸な主人公に優しくしてくれる人々はいい人なんだろうなとは思うものの、どうも主人公が本気で生きているのかが疑わしくなるほどであった。

ただし、くどいほどに主人公の兄のせいで巻き起こされる苦悩を描いた甲斐あり、ラストの玉山鉄二と山田孝之の場面では思わず涙を堪えてしまった。

凡庸な作品であるが、終わりよければ印象も良い。ラストの玉山鉄二に★＋１。