[コメント] ザ・メニュー(2022/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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料理という意匠を借りた(金持ちに隷属する)現代アート批判を表層に、たぶん何層かの風刺劇になっているのだろうが、そう思うと完成度の低い映画に思えてくる(羽を付けられたレストランオーナーの末期のシーンの撮り方とかあっさりしすぎだろう、とかの感想が浮かんでくる)。
だが、余計な装飾的演出を落とすという目的で、あえてそうしたのかも。もしそうであれば、現代風怪奇エンタメ映画としては佳作に思う。どういうことか。
劇の途中で、シェフが、本気なら逃げられたのに逃げなかったよなお前らというセリフがあって、そこでこの映画への評価が変わった。
本気で逃げれば逃げられる。本気で逃げろ、アニャ・テイラー・ジョイのように。
他人に忖度せず、自分の言葉で、ウイットと攻撃性と直情と知恵と演技と生命力を駆使して、セカイから逃げろというのが本作のメッセージなら、これはマトリックスと同種のテーマの映画になる。
マトリックスには、赤いピルと青いピルを差し出してくれる善意の他者がいたが、時代が進んで、今やそんな親切な他者など望めない時代になった。
目の前の世界がマトリックスかどうかは、目の前の世界を受け入れきったらわからない。赤いピルなど誰も持ってきてくれない。それどころか赤いピルなんて最初からない。
だから、自分で赤いピル=チーズバーガーを考えて、相手に作って来させなければならない。与えられた「メニュー」をいくら鋭く批評しても、拒否してさえも、「鉄の檻」からは抜け出せない。
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