村八分になりながら原節子と二人では不可能と思えた田植えを終えた杉村春子が、それまで苦しい表情ばかりだったのに、満面に笑みを浮かべて「本当にお前と二人でやってしまったなぁ」というようなことを言う。そのシーンがあらゆることを物語っているように思う。加えて、杉村演じる母が息子の墓穴を掘るとても辛い場面は、黒澤の作品にしては珍しいくらい気取らない、素の、惨めな、低い目線で描かれているし、同時に怒りに溢れている。あらゆる映画の中でも忘れられないシーンの一つ。