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[コメント] 十五才・学校4(2000/日)

「学校」というテーマにもかかわらず、あまり「学校」のシーンがでてこない、それでいて、これほど、「学校」とは何かと考えさせた作品はない。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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山田洋次監督の、学校や教育についての鋭い問題意識と、優れた観察が生みだした、一つの傑作と言ってよい作品ではなかったか。登校拒否の少年を扱った、一見陳腐に見えるストーリーだが、出演俳優の、どれをとっても優れた演技を土台に、見応え十分の作品であった。

何よりも、あらためて目を見開かされたのは、同一年齢集団の集まりという「学校」の特殊性である。それだけ取り上げれば、なんと「学校」とは不自然で、この社会全体の中でも特異な場所であることか。

そのことに気がつけば、主人公が何度となく口にした、「なぜ学校へいかなければならないのか」という問いの鋭さと、答えの難しさがよくわかる。

そしてこれだけ見応えがあり、鋭い問題提起をなしえた山田監督の、力量のすごさ、まさに円熟の境地とでもいうのだろうか、それをはっきりと感じさせ、日本映画の水準の高さを証明した一作ともいえる出来ばえであった。

そしてラストでも、ただ単に少年の成長を示唆するだけでなく、その彼が実際には、学校に行っても返事一つするのにさえ、大変な緊張と葛藤をへなければならないことを示したところに、この問題の深刻さがあり、それを見逃さない監督の主張があったのではなかったか。

あと丹波哲郎が披露したロシア民謡「カチューシャ」はなかなかのものだった。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ねこすけ[*] RED DANCER[*] にゃんこ[*]

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