キム・シウンが会社と学校に責めたてられていく様子は、競争社会がどこへ行き着くのか、生々しく描いている。そして何より恐ろしいのは、多分、日本でも同じ様なことは、対象や形をかえて起きているのだろうなと思わせられたことだ。本作のリアルな迫力が、これは対岸の火事ではないと思わせる。

ペ・ドゥナは特筆すべき出来映え。素晴らしいの一言に尽きる。日本の刑事で言えば、『砂の器』の丹波哲郎、『誘拐』の渡哲也に匹敵する、ある意味、理想の刑事だと思う。

彼女のまっすぐな視線に、会社の人間も学校の人間も思わず目をそらす。そうさせるだけのものが、彼女にはある。