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[コメント] インフォーマント!(2009/米)

本来、「自由競争」にとって大罪となることを題材にしながら、それを面白おかしければよいと、のんべんだらりと描いた映画。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前半と後半とでずい分印象が違う。はっきり言って後半は何だか「あの人は今」みたいな感じさえしてしまう。

実話の映画化だそうで、内部告発者の横領なども含めて事実らしい。その虚言癖も事実なのだろう。それを「味の素」とか「協和発酵」とかの固有名詞を交えて忠実に映画化すればこうなるのだろう。

だがドキュメンタリーでない映画は必ずしも事実に忠実でなくても良いはずだ。

例えば本作なら、実話にヒントを得てフィクションとして映画化、だから固有名詞なんかは全部適当につくってハードなドラマにすることができるのではないか。(別にコミカルにしたことが悪いとは思わない。ハードでブラックな話をコミカルに描くからこそ一段と面白くなる例はいくらでもある)

裏カルテルを暴露した内部告発者に対し、企業側が彼の些細な過ちを針小棒大に言いたてて、裏カルテルの告発を企業乗っ取りを目論む彼の謀略だと、徹底的に攻撃を仕掛ける構図にして、不正隠しをはかる巨大企業対良心の呵責に耐え切れず真実を告白した無力な個人、という対決ドラマにする、そういう物語(なんだか『インサイダー』みたいだが)にすることもできる。

要はそうすることによって何を伝えるか、ではないだろうか。その点で本作はなんともしまらない選択をした、と言わざるをえない。もっともっとハードでスリリングでブラックにもできる話を、この程度で済まされてはいささかがっかりさせられる。

前半の、録音テープにもわかるように一々人物紹介をしながら声をかけるなどコミカルなシーンや、マット・ディモンが会社の弁護士と部屋で話をする際に次々とブラインドをかけるシーンの面白さなど、けっこう良いシーンが多いだけに余計にこの程度の話で済ましたことが惜しまれる。

ソダーバーグ監督とマット・デイモンには、映画的なテクニックや演技だけでなく、もっと気概と大志をもって映画を撮れと言いたい。

(評価:★2)

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