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[コメント] ウォーロード 男たちの誓い(2007/中国=香港)

テンポよくサクサク進み、迫力あるアクションシーンが存分に楽しめた。ただその分、3人の義兄弟の、心の動きというか、葛藤みたいなものがいささか手短になりすぎたような気もする。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







3人の義兄弟の関係は、最初は盗賊から清朝兵士へと帰属する際に、いわばそのための保険として、言い出したパンジェット・リーと、盗賊のリーダーたちであるアルフアンディ・ラウ、ウーヤン金城武の盟約であった。

それが最初の戦闘に勝った後、女を犯した兵を軍規違反で処刑するところから、はっきりとパンの「誰であっても迫害されてはならない。そういう国をつくる」という大義が示され、そこから義兄弟の絆の大義名分が3人の間に生まれる。

それが、蘇州攻略戦ではかなりの犠牲を払い、降伏兵を殺戮することまでして、パンは両江総督にまで登りつめ、さらに西太后から3年の租税免除の約束を取りつけ、誰も迫害されない国づくりがようやく実現しそうなところまできた。

しかし、ここで朝廷の重臣から自らの軍を解体せよ、そのためには軍に強い影響力をもつアルフを取り除け、でないと総督の地位は安泰ではないぞと示唆され、パンは自らの理想と義兄弟の盟約との間で葛藤しながらも、アルフの暗殺を決意することになる。

そしてパンの理想に共鳴し、その正しさを信じながらも、ウーヤンは「義兄弟を殺めた者には必ず死を」の誓いを守ってパンと対峙する。

この点ではこの映画は一方で迫力ある戦場のアクションシーンも面白いが、3人の義兄弟の契りを結んだ男たちが、その契りの土台にある大義と時代の動乱の狭間で、ギリギリの、それこそ苦渋の選択をしながら自らの信義を貫こうとする、悲劇的なドラマこそが骨格となっていると思う。

そしてこういう流れの中では、パンとアルフの間で漂うリィエンシュー・ジンレイは、かえって話をややこしくてしまい、3人の男の、それぞれの生き様と清朝末期の激動の時代が招く悲劇的なドラマを薄めているように思える。

それでももう少し時間を長くして、この3人の男たちの、それぞれの大義に殉ずる姿勢をもっと丁寧に描いていれば、リィエンも映画に添えられた華としてもっとすっきりとしたのではないか。その辺の扱いがちょっと残念な気がする。

ただ、「投名状」とかいう義兄弟の契りの儀式にはちょっと驚いた。あの迫力があるから、最後、「義兄弟を殺めた者には必ず死を」というウーヤンの執念にかなりの説得力が生まれている。

また、最後のジェット・リーと金城武との一対一でのアクションシーンでは、ジェット・リーがさすがの貫禄と鋭い動きを見せて非常に見応えがあった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ペパーミント

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