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[コメント] アメリカを売った男(2007/米)

20年以上の長きに渡って、二重スパイをしてきた男の心とは、深い闇に覆われてとても他の人間には窺い知る事はできないのではないか。そう思わせるだけのクリス・クーパーの巧みな演技が素晴らしい。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







FBIの職員として国家に忠誠を誓う、それが本来の生活の全てであり、それこそ四六時中そうでなければならない中で、身近な、誰にも知られることなく「売国奴」として敵に情報を売り高額な報酬を得る。

そんな生活を定年を迎えるまで、それこそ、終わりの見えない数十年もの間、出来るものだろうか?

この問いに対する答えは簡単だ。現にそれを実行した男がいるのだから。そういうことが出来る人間はいるのだ。

だが、人はどうすれば、そういう二重生活に、発覚するかもしれないという恐怖に耐え、表面にまとった「愛国心」と自らの「売国的行為」に折り合いをつけることが出来るのか?あるいは例え折り合いをつけられなくても、そういうことが、行為として出来るのだろうか?

少なくともそれが出来た男はいたのだが、なぜそれが出来たのか。その心のうちは到底わからない。

ラストのエレベーターでの、ライアン・フィリップとの邂逅での、クリス・クーパーの有様は衝撃的でもあった。見るものにわけのわからぬ衝撃であり、一体彼は何を思っているのかその想像すらつかない、一種の恐怖さえも感じられるほどの得体の知れないものがあった。

金が目的で20年以上も隠しとおせるものなのか?元々は共産主義者なら20年以上も割り切って耐えられるのか?彼の表情は何も教えてくれない。

底知れぬ闇が人の心にはある、ということを語るのみだ。その深さに、ただ、ただ、驚く。

(評価:★4)

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