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[コメント] 酔いどれ天使(1948/日)

ラストで女学生の台詞を借りて黒澤明が、自分の言いたいことを言っている。あまりにストレートな表現ではあるが、それがそうわざとらしくも軽くも感じられることがないのは、やはり映画全編を通じた怒涛の迫力に気圧されたからだろうか。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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砂浜で棺おけを壊すシーンや、情婦の部屋での喧嘩のシーンでの凝ったアングルなど、いろいろな試みもあるが、それらをすべて巻き込んで展開される、志村喬三船敏郎の絶妙な演技がやはりすごい。

映画が進むにつれて、どんどん「情けなく」変貌していく三船に対し、終始一貫して変わらぬ姿勢を貫く志村。その鮮やかな対比がぐいぐいと見るものを引き込んでいく。この二人の対比だからこそ、よいのだろう。

志村だけではただの頑固で意固地で世をすねたようなおっさんだし、三船だけでは、まんま、落ち目一方のヤクザでしかない。ところがその二人が絡んでこそ、双方が神々しいまでの輝きをもつようになる。

最初のうちは、何を言っているのか、こまかいところがよく聞きとれないシーンもあったが、物語が進むにつれて、「こまかいところが正確に聞きとれない」ことがまったく気にならなくなるというか、まるで自分がそこにいて会話の流れに参加しているように「ああ、こういうことをこいつは言ってるんだな」と頭の中で理解できるようになる、そんな気さえさせる、まさしく飲み込まれてしまったような映画だった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)づん[*] ゑぎ

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