[コメント] 喜劇とんかつ一代(1963/日)
上野動物園の側にある青龍軒という名の、加東大介が料理長を務めるレストラン(もちろん、精養軒がモデル)も、テラスから動物園の方へ抜けることができるようになっており、テラスの手すりを使った見せ場が用意される。或いは、三木のり平と池内淳子が住むアパートも、のり平の実験室があったり、隣家の芸者・水谷良重が窓をまたいで入ってきたりする。このような複雑な構造物を舞台にして、まるで手品のような、人物の出し入れの演出を堪能することができるのだ。中でも白眉は、森繁と淡島の、とんかつ屋の狭い屋内で行われる追いかけ合いと、激昂した豚殺しの達人・山茶花究が加東に殴りかかるシーンだろう。
また、加東の息子・フランキー堺の軽妙な芸も多くの見どころを作る。恋人である団令子とのラブシーンは悉くいい。ホテルの一室で、ひっきりなしに行われるキス。湯島天神を二人で歩く場面の横移動ショット。
そして、大好きな横山道代(横山通乃)が後半、常軌を逸した活躍をしてくれるのも、ポイントが高い。フランキーとの見合いの席で、いきなり、テーブルの上に乗り踊り出すのだ。そしてそして、厨房の森繁、淡島、山茶花と、客の水谷良重ら芸者達で唄う場面がエンディング、というのもとても満足感のある終わり方。川島の夭逝は、まさに絶頂期のことだったのだ。
#本作は1963年4月公開。川島の死は1963年6月11日、遺作『イチかバチか』の公開は6月16日とのこと。
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