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[コメント] 隣の八重ちゃん(1934/日)

カメラは縦横無尽。自由闊達。家屋の外から垣根越しで屋内を映した移動が数回。部屋の中でも小刻みな前進後退移動をし、的確な構図を維持する。座敷に座っている飯田蝶子を俯瞰で撮ったカットが唐突に挿入されて驚かされたりする。或いは、
ゑぎ

 帝劇で映画(ベティ・ブープのアニメ)を見に行くシーンの夜の銀座の情景が、タクシーからの見た目で提示されたり、喫茶店の中を矢張り屋外(窓外)から撮ったカットも凄いじゃないか。そして野球観戦のシーンの簡潔かつシュールなカット割りも素晴らしい。驚くべきことに、ピッチャーの投球動作を3回続ける、明らかなジャンプカットがある。

 主人公の八重子・逢初夢子は公開当時19歳。友人役の高杉早苗は16歳。高杉はワンシーンのみの登場だが、可愛い。このシーンが実に愉快なのだ。二人の「おっぱい」についての会話や大日方傳の靴下の扱いの大らかさ。そして八重子の姉役の岡田嘉子がいつもながらの妖艶さで一人空気が異なる。出てくるシーンは彼女がシーンをかっさらってしまう。

 『マダムと女房』から3年後の土橋式トーキーで、音の明瞭さは向上しているように思うが、効果音の作り方はまだまだだ。全体に音が大きいと思ったが、特にラストの雷の効果音が下手くそな音作りで戸惑った。ただ、逆にこれが観客を不安な気持ちにさせる。不穏な雰囲気を醸し出すのは狙い通りなのかも知れない。

#備忘

・大日方の科白「モチのロン」

・逢初夢子は鼻歌で「恋人よ我に帰れ」(「Lover,Come Back to Me」)を唄う。(日本語歌詞で。)

・高杉は大日方のことをフレデリック・マーチに似ていると云う。

・大日方はドイツ語の勉強中に『会議は踊る』の主題歌を口ずさむ。

(評価:★4)

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