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[コメント] ロスト・フライト(2023/英=米)

本作のジェラルド・バトラーは旅客機のパイロット。悪天候が予想される中、シンガポールから、東京へ向かうが、飛行機は嵐に会い、運悪くフィリピンの反政府ゲリラが支配する島に不時着してしまう。という経緯で始まるアクション映画。
ゑぎ

 これもすっごいジェットコースタームービーだ。緩急の緩がほとんど無いのだ。乗客は14人だけだが、各々のキャラの掘り下げはほゞ無く、その唯一の例外が殺人容疑の逃亡犯で刑事に護送されているルイス・ガスパール−マイク・コルター。また、ホノルルにいるバトラーの娘ダニエラ−ヘイリー・ヘッキングが、スマホにメッセージを吹き込むシーンで、ゲリラに拉致された乗員や乗客たちを見せ、ボイスオーバーにする部分は、緩急の緩と云えるかもしれないが、こゝも簡潔に繋いでしまう。

 アクションシーンについても、ジャングルの中の廃校のような通信施設におけるバトラーの格闘シーン、拉致された乗客乗員の救出シーケンス、そして、島からの脱出をかけた銃撃・戦闘シーンと、それぞれ頑張って見せてくれるし、十分昂奮させられるのだけれど、厳しく云えば、突出感のない、やっぱり簡潔過ぎる、という感覚を持つ演出だ。例えば、殺人犯のガスパール−コルターが、バトラーを助けることになる経緯を膨らませるとか(もっと愚痴を云わせてもよかったと思う)、拉致された人たちが、もっと怖い目に合うことでスリルを醸成するとか、考えられると思うのだが、すっぱり割愛して、ワザとプロットをキビキビ繋いでいるように見える。

 あるいは、上にも書いたように主人公以外のキャラが薄いのは、副操縦士−アン・ヨーソンやチーフ乗務員−ダニエラ・ピネダといった事故当事者もそうだが、ゲリラのボス−ダトゥ・ジュンマーとその弟(英語で通訳ができる男)や、航空会社本部(NY)で指示をする危機対策担当のスカースデイル−トニー・ゴールドウィンなんかにもそう感じる。だが、かといって、それぞれのキャラが中途半端というワケでもなく、もうちょっと描きこんでくれたら、面白くなるのに、というレベルなのだ。あと、全体に、旅客機の飛行シーンにおけるCG画面の造型は、かなり安っぽいものだと思った。本作の原題が『PLANE』であることを考えると、タイトルロールの見せ方としては、どうかという気になった。

 とは云え、アラはあっても面白いアクション映画だ。最後に良いところを書いておくと、不時着した飛行機周辺での戦闘シーンで、ゲリラの車両のボディを貫いて(銃弾が貫通して)狙撃する演出はなかなか良かったと思う。また、殺人容疑者ガスパール−コルターに関する帰結については(ほったらかしになる点も含めて)、私は好きだ。それと、バトラーの娘役、ヘイリー・ヘッキングがとても可愛らしいということも書き留めておきたい。

#続編は『Ship』なのか。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ひゅうちゃん 月魚[*]

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