コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] こんにちは、母さん(2023/日)

ビルの谷間から見上げた空。大手町辺りかと思う。オフィスで、書類をシュレッダーにかける大泉洋。彼は大企業の人事部長。部下の加藤ローサが、営業課長が来て待っていると云う。これが宮藤官九郎だ。
ゑぎ

 同窓会の相談。この同窓会は、実は反故にされる(というか描かれない)。宮藤のリストラ話に転換される。あるいは、宮藤案だった同窓会の屋形船は、吉永小百合が乗る遊覧船になる。大泉のオフィスの窓から見える線路とホームは東京駅か。

 向島の足袋屋「かんざき」。大泉は「こんにちは」と云って入って来る。これは後半にも反復される。母親の吉永はホームレス支援のボランティアをやっている。その仲間にYOU枝元萌がおり、枝元は煎餅屋。YOUの夫はスウェーデン人と云うが、最後まで出てこない。こゝに、巡査の北山雅康も入ってくる。山田洋次の映画に北山が出ていると、ホッとする(「とらや」の三平ちゃん!)。神戸浩だって顔を見せるのだから、出川哲朗も出してやればいいのにと思う。さらに牧師先生の寺尾聰が登場する。

 大泉が帰宅すると誰もいない。お掃除ロボットに話しかける。なんだ、妻子と別居していたのだ。酸辣湯麺の配達。妻から携帯に電話。娘が3日帰ってこない。娘の永野芽郁の登場は、銭湯の前。吉永と「かんざき」に帰宅すると、大泉がいる。永野と大泉の云い争い。先に書いておくと、本作の永野のキャラはイマイチだと思った。特に、吉永に対する芝居の間(ま)が変で気持ち悪いと感じたのだ。リスペクトし過ぎか。

 ついでに書いておくと、ホームレスの田中泯の存在もイマイチ。讃美歌をバックに、空き缶を運ぶ描写とかも、とってつけたように感じる。教会の前で倒れた田中のことを、寺尾が「天使かも知れない」と云うのもワザとらしい。酔っ払った田中が橋の上で東京大空襲の話をする(巡査の北山が止める)場面も、中途半端じゃないか。

 あと、足袋屋は、作り手の足フェチの現れだ(原作通りなのだろうが)。吉永が永野に、自分がプロポーズされた話をするシーンで、永野の靴下を脱がして、足を触って計測する。これがプロポーズだったということなのか。なんか変な気持ちになった、と云わせるのにも唸ってしまう。またついでに云うと、息子(大泉)の嫁が一人で来た話でも、パンプスを履く足のフラッシュバックがある。これは品の良いフラッシュバックだと思ったが。結局、この演者(大泉の妻)は出てこない。

 しかし、終盤のまとめ方はやっぱり良い点がある。例えば、吉永が寺尾に劇中最後に云う科白の見せ方。こういうところは上手い。ラストシーケンスの吉永と大泉のやりとりも、最初は、もっと吉永を乱れさせたら面白いのに、と思っていたのだが、途中で(大泉の今後の身の振りようを聞いた途端に)ちょっと嬉しそうになる吉永、という描写も実にいい。そして花火をバックにエンドロールっていうのも幸せな気分にさせてくれるのだ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。