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[コメント] バービー(2023/米)

完璧に作り込まれたこの特異な世界観の造型(再現性)は凄いレベルだと思う。ディティールにこだわったギャグの連打も楽しいし、後半になって、ミュージカル映画のように歌唱シーンが増えるという構成も私の好みだ。
ゑぎ

 しかし、ガーウィグの演出、特に画面造型という点では、ちょっと物足りないと感じた。観客としての私は、完成した映画の良し悪しは、脚本(スクリプト)の良し悪しでは決して決まらない、と普段思っているが、実は、本作については、まず第一感、ガーウィグが一人で脚本を書いていたら、もっと映画的な場面が増えたんじゃないか、と思ってしまった。端的に云って、科白が多過ぎる、かつ説明的過ぎると思うのだ。それとも関係するかもしれないが、人物に寄り気味の画角が多いのも好みじゃない。全体、良い画面が僅少だと思う。バービーランドの完璧な世界観の構築にも、だんだん飽きて来るし、冒頭の真俯瞰の連打や、浮遊感。あるいは、終盤の、大勢のケンたちが、浜辺で対決するモブシーンぐらいじゃないだろうか(良い画面は)。付け加えるなら、マテル社の役員会議室の美術は面白いと思った。

 さて、俳優に関して書いておこう。もちろん、本作はマーゴット・ロビーが出ずっぱりの、彼女のための映画と云ってもいい作品だが、役者の仕事として面白い、と思ったのは、彼女よりも、ライアン・ゴズリングのケンの成り切りぶりの方だ。彼がコメディパートにもミュージカルパートにもよく機能していると思った。あと、ゴズリングに対抗するケンとして出て来る、東洋人的風貌のシム・リウ(この人は『シャン・チー』のタイトル・ロール)。彼が良く目立っているのが、嬉しかった。そして、顔に落書きをされているバービーのケイト・マッキノン。この人が、もっとハジけた演出を付けられるのかと思って楽しみに見ていたのだ。いいところまで行っているが、もっとぶっ飛んだ造型にすべきだろう。

 尚、バービーランドから人間界への(またその逆の)道程の描写が反復される部分は、映画的な太々しい場面転換で良いと思う。人間の世界との境い目(裂け目)が一切出て来ない、出さない、という対応も良いディシジョンだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ロープブレーク[*]

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