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[コメント] インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023/米)

メインの時間軸は1969年。インディアナ・ジョーンズは70歳だ。NYのアパートで朝目覚めたジョーンズが、隣家の青年に、音楽がうるさい、と文句を云いに行く場面。この音楽が「マジカルミステリーツアー」。
ゑぎ

 「マジカルミステリーツアー」が全編を象徴しているという分かりやすいメッセージ。もっとも、本作にはプロローグのような前段があり、遡ること約四半世紀、大戦中(ベルリン陥落間近の頃)のシーンから始まる。美術品をベルリンへ運ぼうとするナチスの兵士たち。こゝで、重要事項をセットアップする。本作のターゲットはアンティキティラと呼ばれるアルキメデスのダイヤルであること。重要な関係者として、ジョーンズ−ハリソン・フォードの相棒であるバジル・ショー−トビー・ジョーンズと、ナチス側で敵役のユルゲン・フォラー−マッツ・ミケルセンを印象づけておくこと。これらを、連合国からの攻撃の真っ最中というシチュエーションの中で、自動車とバイク+サイドカーのチェイスや列車アクションを畳みかけて見せる、私には、つかみはバッチリというオープニングだ。

 しかし、前半のハイライトは、月面着陸に成功したアポロ11号乗組員のNYでの凱旋パレード(ティッカーテープパレード)から、地下鉄構内、線路内におけるアクションシーケンスだろう。ジョーンズは、騎馬警官の馬にまたがり、紙吹雪の舞う街頭や、地下鉄内を疾駆するのだ。こゝもほゞCGでの造型だと思われるが、それでも私はそのスペクタキュラーに興奮する。地上のシーンも美しいが、地下鉄内のアクションの設計はやっぱりよく出来ていると思う。

 もう少し配役に触れながら感想を進めると、まず、ヒロイン、といってもジョーンズの娘のような存在で、プロローグの相棒だったバジル・ショーの娘(ジョーンズが名付け親だという)ヘレナ−フィービー・ウォーラー=ブリッジについて。彼女の評判がイマイチのように見受けられるが、私は、かつてのいかにも男好きしそうなハリウッドヒロインではない、そのユニセックスな頼もしいルックスもまた良いと思いながら見た。ただし、彼女の行動原理の一貫性には若干難があると思う(でも、子ども時代に、帽子を渡す場面があるということは、ずっと思慕の念を秘めていたということなのだろう)。続いて脇役では、NYに現れたミケルセン一味のメンバーで、無関係な人まで殺しまくるボイド・ホルブルックが本作でも印象に残った(『ローガン』でも良い敵役だった)。あとは黒人女性エージェント−ショーネット・レネー・ウィルソンが雰囲気も良く、この人はもっと終盤まで絡んで欲しかったと思う。それを云うなら、ギリシアの漁師として出て来るアントニオ・バンデラスの扱いはちょっと酷いだろう。こういう役にビッグネームを当てると映画ファンはがっかりする、ということぐらい分かっているはずなのに、と思ってしまう。

 さて、中盤以降も、モロッコでの三つ巴のチェイス(トゥクトゥクでのチェイス)、ギリシャ沖での海洋アクション(こゝでは蛇ではなくウツボや大ウナギが吃驚させる)といった見せ場を繋いで、アルキメデスの核心へと迫っていくが、時空の裂け目以降のCGばりばりの合戦シーンも、私はワクワクする。ダイヤルを見た彼が「Eureka」と呟くのも嬉しい。そして何より、シラクサからNYへの時空のジャンプの、あっけらかんとした大らかさがいいじゃないか。これはマンゴールドらしい処理だろう。もう何度も同じことを書いていて恐縮なのですが、映画の評価は極めて私的な [満足度]/[期待度] だ。私はこのシリーズのファンじゃ無いからかもしれないが(一作目から三作目まで公開時に映画館で見てますが)、本作は充分満足できる仕上がりだと感じた。ま、これで有終の美として欲しいとも思いますが。

#マリオンは、一瞬、倍賞千恵子が演じているのかと思った。

(評価:★3)

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