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[コメント] わたしは最悪。(2021/ノルウェー=仏=スウェーデン=デンマーク)

本編前、赤、青、黄、黒と、バックを切り替えてクレジット/タイトルが出る。これが、ラスト近く、窓のセロファンだろうか、カメラのフィルターだろうか、同じような色の切り替えが出て来て、開巻を思い出させる。こんなところから凝っている。
ゑぎ

 また、ファーストカットがとてもいい。パーティ衣装で横を向いて立っている、主人公ユリア−レナーテ・レインスヴェ。画面奥には、大きな川と山が見える。ゆっくりとドリーで前進移動するショットだ。しかし、主人公ユリアは、シーンによって、顔が全然違うと思いながら見た。笑顔、怒った顔、泣き顔。髪型、服装によっても変わる。ダコタ・ジョンソンに似ていると思う顔が多かったが、場面によってはケイト・ウィンスレットみたいとか、松岡きっこを思い出したりとか。

 さて、全体の感想を正直に記すと、今一歩面白さが高まらない、と感じられた。良いシーン、凝った画面も沢山あるが、バラバラに統一感無く現れるだけで、集積されない感覚を持ったのだ。あるいは、一番大掛かりな凝ったシーンと云っていいだろう、道行く人や乗り物を、マネキンチャレンジ風に静止させたシーケンスが、私には、つまらなく(ワザとらしく)感じられた、ということも理由として大きい。あと、パーティシーンでの、初対面のアイヴィン−ヘルベルト・ノルドルムとの会話や、レストルームでのやりとりもイヤだし、煙草の煙の交換?を高速度撮影で見せるショットも面白いというより、場違い(気持ち悪い)と思った。ウーマンスプレイニング(マンスプレイニングの揶揄)の場面ももっと鮮やかに描くべきではないか。

 では、良かった、面白かった、という部分も列記しておこう。まずは、ファーストカットは、漫画家アクセル−アンデルシュ・ダニエルセン・リーの出版記念パーティの断片だが、このパーティを一人帰るユリアが、道を歩きながら、山の稜線と夕陽を見て泣く場面がとてもいいと思った。なぜ泣くのか全然説明しないのがいい。あとは、土の味のキノコ?を口に入れてからの映像表現が、面白い。ナイフを持っているのが怖いし、キッチンの床が白波になり、落下するイメージ。ジョーダン・ピールみたい。また、カメラワークの面白さだと、アクセルが病院でエアドラムをやっているシーンの正面ショットで、彼の手の動きに合わせて、ものすごく素早いパンとティルトを見せる演出も特記すべきと思う。

 というようなことを記してみても、全体的に、題材に対して、映像が凝り過ぎているように思えて来る。こんなにテクニカルな見せ場ばかり作らずに、ストレートな演出を基調にした方が良かったのではないだろうか。

#邦題の句点も疑問。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ペペロンチーノ[*] 袋のうさぎ

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