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[コメント] オールド(2021/米)

ミニマルな『皆殺しの天使』という趣きだが、流石の腕力でエンディングまで楽しく見せる。
ゑぎ

 演出スタイルでよく目立つのは、二人の人物を縦(前後)に配置し、一方を左右どちらかの端にアップ(それも、エクストリームなアップ)にし、もう一方を奥にフォーカスを外して撮ったカット、被写界深度の浅いカットの多用だ。冒頭の送迎バスの中のシーンから、全編これをやる。すなわち、カメラの視点(大げさに云えば超越した者の視点)を強烈に意識させる作戦なのだ。ただし、カメラアイ(客観ショット)と登場人物のミタメ(主観ショット)を錯綜させ、スリルを醸成するのはこの手の映画では常套なので、上手くいってない場合、例えば、断崖から外に出ようとした際の脳震とうのような見せ方はチープ(ありきたり)に感じられる。終盤の、視力が衰えた人のミタメと、左耳の聴力を失った人を絡ませた演出は、とてもいいと思った。その後の、夜の浜辺で、焚き火をバックに、老夫婦が語り合うシーンが一番良いシーンかも知れない。

 山上の光はインディアンの合図。あるいは、活劇における戦場の妊婦のモチーフもしっかり織り込んでおり、本作も、またぞろ西部劇みたい、と思いながら見る部分があった。また、『皆殺しの天使』のような趣きも、終盤には理に落ちた展開にせずにはいられないのだ。つくづく、アメリカ映画の伝統の業(ごう)は深いと思った。尚、シャマランの出しゃばり癖は、いつもながらだが、中途半端で見苦しい。これぐらいの役なら、ちゃんとプロの俳優に演じる機会を与えろよ、と思う。出たとしても、バスに乗り遅れる人、ぐらいにしとけよ、と。

《以下、ネタバレ注意!》

 備忘に近いが、死体の扱い、見せ方などについて、感想を記述しておく。

・死体が流れて来るシーンは2回あるが、いずれも怖さが足りない。

・嬰児の死体はさすがに見せないが、もう少し生きてても面白かっただろう。

エリザ・スカンレンの落下カットは最近のCGだともっと上手く見せることができると思った。彼女についても死体は見せない。

アビー・リーは低カルシウム血症。最期は凄絶。ミズ・ガラスか。

・話は変わるが、トーマシン・マッケンジーの最初の水着は、もっと小さくても良かったんじゃないか。

(評価:★3)

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