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[コメント] 偶然と想像(2021/日)

三話共、ズームの使用がワンシーンのみある。一話目はズームインとズームアウトの往復2カット。二話、三話目はワンカットのみのズームイン。いずれも被写体を強調したい、という生理というか思いが明確で、納得できる使い方だ。ホン・サンスと全然異なる。
ゑぎ

 一話目は、タクシーの中での古川琴音玄理との会話の見せ方が自然な感じでとてもいいと思ったが、「偶然」は作劇臭い。青山にあるという中島歩のオフィスのシーンが輪をかけて作劇が過ぎると思う。ただし、古川琴音の「想像」の場面の見せ方は三作中、最も鮮やかで、単純な驚きは大きい。

 二話目は、「偶然」も「想像」も希薄な描き方。しかし、渋川清彦の部屋での森郁月との会話場面は出色の出来だと思う。渋川の口調、展開の意外性も面白いが、森郁月の小説朗読後の、正面バストショット切り返しが抜群なのだ。彼女のカットで光(照明?外光?)が微妙に変わる。頬に涙が伝う際、ちょっと明るくなる、なんてところに感動してしまった。演出と撮影の調子は三作で一番好き。

 三話目の「偶然」が一番捻っているというか、脱臼ワザ。「想像」は爽やかで、全体としては落ち着きがいい。三話目のみ、濱口竜介らしい「不在者」の存在を浮かび上がらせるモチーフ(すわなち占部房子河井青葉の不在の友人の存在)、という作劇であり、きっと、三話を締めるに相応しい思い入れがあるのだろう。

 尚、シューマンのピアノ曲の劇伴は、最初は、いいと思ったが、繰り返されると、ありきたりな感もしてきた。

#エンドクレジットには「協力」で秋山恵二郎の名前が複数回見えた。

(評価:★4)

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