例えば、各挿話の導入部が、それぞれの知人の様子を客観視するカットから始まり、各挿話の終結部は、山並みや海岸などの風景にパンニングする、というような事柄や、キム・ミニが、夫とは５年間毎日一緒にいる、ということを語る部分は、三つの挿話に共通している。

　最初の二つの挿話の相似部分は、いずれも、キム・ミニが事前にアポを取って、先輩の住居を訪問していること。訪問中に、クレームを云いに来る闖入者（玄関先で云い合いのようになる）があることなど。

　尚、全編通して、人物が何かを食べていたり、飲んでいたりするシーンが多く、リンゴの皮をむいて食べる、というシーンが一話目と三話目で登場する。

　三つ目の挿話は、キム・ミニが映画館（とホールを併設している建物）へ訪れ、学生時代の友人キム・セビョク（『はちどり』では漢文塾の先生を演じてた）と偶然出会い、今はその友人の夫になっている、かつての先生クォン・ヘヒョ（地下のホールのイベントに出演するために来ている）にも出会う、というプロットだ。しかし、キム・ミニはもしかしたら、クォン・ヘヒョに会うために、こゝへ来たのではないか、と思わせるし、もともと映画を見る気もなかったでのはないか、という疑問も起こる。

　さて、タイトルの意味は、一話目の中で、先輩の隣人の奥さんが、夫と娘を残して一人で逃げた、という話が出て来るので、これが該当する、とも受け取れるが、いや多分そんなことはなく、キム・ミニこそがタイトル・ロールなのだろう。いや、各挿話でキム・ミニが会う３人の女も皆タイトルロールなのか。

＃本作のズームの多用は、同一カット内でのパンニングも多く、ほとんど気にならない、納得性のあるものだ。つまり、ほとんどヘンテコズームとは感じない。