[コメント] 殺陣師段平(1950/日)
科白、特に演技論の部分は黒澤明らしく青臭いというかお説教臭い。(なんて、つい嫌味を云いたくなりますが、いや多分、原作にある科白なのでしょうね。)しかし、流石にマキノはちゃんと演出の映画にして見せてくれています。画面を見る限り、黒澤臭さが全くない、誰のものでもないマキノの映画になっている。
クレジットはトップで市川右太衛門が出る。2枚目に月形龍之介と山田五十鈴が並ぶ。出番から云えば勿論タイトルロールの月形が一番で、もう圧倒的に映画を支えているのだが、市川右太衛門の澤田正二郎もなかなかいい。東京弁がいいから驚いた。ついでに云うと座付き作家の倉橋仙太郎を演じる進藤英太郎もずっと東京弁を喋る。そして、段平の妻おはる−山田五十鈴も見せ場のある、芝居しがいのあるいい役だ。前半の月形とのやりとりでは山田が食っていると云ってもいいのではないか。また、この髪結いの家のセットが良く、中二階のような離れの部屋や縁側などの空間を機能させながら二人の感情がよく演出されていて見事だ。さらに、後半の京都の氷屋の斜面−階段−の途中にあるロケーションも特筆すべきで、度々子供達の歌声が聞こえる演出も情感たっぷり。
#配役等を備忘で付け足す。
・冒頭のつけの取り立て(つけ馬というセリフがある)の女は赤木春生(春恵)
・段平から「飛田、松島に馴染みがいる」というような科白がある。
・娘の「おきく」は月丘千秋。月丘夢路の妹。ちょっと浪速千栄子に似ている。
・道具方の杉狂児が目立つ役。ラスト近くの酔っ払い演技が見事。
・若い役者の役で原健作もたびたび登場。ただ、余り目立たない。
・引き抜きの男が加藤嘉。引きの画が多く、実は初見では判別できなかった。
・氷屋の婆さんは初音麗子(礼子)。いいセリフ回しだ。
・医者は横山エンタツ。「むちゃくちゃやがな」
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