コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ローズの秘密の頁(ぺージ)(2016/アイルランド)

タイトルバック、ファーストカットは病院の暗い廊下。続いてルーニー・マーラの後姿。ドリーで寄り、ティルトダウンすると、本(聖書)に何か書き込んでいる。「The book of Job」の「Job」を「Rose」に書き換えている。
ゑぎ

 モノローグで「わたしは、わが子を殺していない」と入る。そして、フォーカスインで、廊下をヴァネッサ・レッドグレーヴが歩いてくるカットを繋ぐ。この二人(マーラとレッドグレーヴ)がリレーキャストなのだ。主人公の役名はローズ。

 まずは、アイルランドの村、建物の風情、葦の生えた浜辺、対岸にも岬がある波打ち際の風景、曇天の光、あるいは、病院内のセットの造型を含めて、撮影と美術装置が一級なので、画面については、とても満足したし、見応えがあった。撮影のミハイル・クリチマンは、『父、帰る』(2003)から『ラブレス』(2017)にわたるズビャギンツェフの撮影者だが、もっと英米の映画で活躍して欲しいと思う。ジム・シェリダンの演出も、個々のシーンは、無駄のない鮮やかな手腕だ。例えば、マーラが浜辺で神父−テオ・ジェームズと最初に出会うシーンの緊張感なんていいと思う。「怖くないのか?そんな風に目を見る女はいない。」という科白。この後、マーラの視線がずっと気になってしまう演出だ。

 ただし、後半のプロットというか見せ方は、純化というかシンプル化し過ぎていて、戸惑ってしまう部分があることも確かだ。例えば、マイケル−ジャック・レイナーや、彼の乗る戦闘機とマーラとの描写。浜辺を低空飛行するシーンだとか、マーラが森の小屋で一人暮らしをしてからのシーンなんかも画面は良いのだが、世界がミニマル過ぎるように思える。二人以外の世界が霧消しているかのような描かれ方なのだ。私について云えば、このあたりも画面が良ければ、映画として許せるファンタジーと思えるのだが。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)赤い戦車

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。