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[コメント] ソニはご機嫌ななめ(2013/韓国)

本作も登場人物(4人)は映画に関係する人たちだ。主人公でタイトルロールのソニ−チョン・ユミは映画を学ぶ学生。
ゑぎ

 ソニの元カレのムンス−今は亡きイ・ソンギュンは、既に一本監督したことがある(内容はソニについてのものだったよう)。ムンスの先輩ジェハク−チョン・ジェヨンは、ソニが監督と呼ぶシーンもあるので、映画監督として生計を立てているのだろう(でも、スランプ状態に見える)。そして、ソニの留学のために推薦状を書いてくれる先生−キム・サンジュンは、ジェハクが先輩と慕っていることから、科白(字幕)では明示されていないが、映画関係の教授なのだろうと推測する。

 本作はこの4人の関係、ソニと3人の男性の恋愛関係を描くものだが、原題の「私たちのソニ」という表現がぴったりに感じられる内容(あるいは描き方)になっている。ソニが3人の前にフラッと現れ、知らぬ間にフラッと去って行くという趣きに描かれているのがいい。ちなみに邦題の「ご機嫌ななめ」というニュアンスは、一部シーンで無いことは無いけれど(ソニが激しく怒る場面などはあるが)、映画全体の雰囲気とは似ても似つかない。

 さて、相変わらずのことだが、本作においても、基本は固定ショットの長回しを主体とする会話劇だ。テーブルを挟んで向かい合った人物が延々と会話するのを(多くは人物の横顔を)、切り返しも無く見せられるシーンが頻出する。私は何度も、ソニの正面バストショットが見たいと思った(それは主演女優の顔が見たいということだ)。また、ショットの途中で唐突にズームが使われるのもいつものことだが、本作では、意味不明の(例えば、画面内の昆虫や小動物にズームインするといった)ズームの使用は全くなく、ほゞ納得性のあるものだったと思う。これはこれで、ちょっと寂しい感覚も持つ(意味不明のズームを期待しているところもあるのだ)。

 あと、異なる会話シーンの中で、異なる人物が、同様の科白を云い、なんかそれどこかで聞いたことある、みたいなレスポンスを返す部分、例えば「お前ほど可愛い女は知らない」みたいな科白や、何かを問われて「また今度云う」と答えるといったスクリプトは、スリリングで面白いし、他にも、手を繋ぎ合ったり、相手の髪や顔を触るといった手の所作の演出や、酔っぱらった2人が路上で抱擁するシーンの繰り返し、といったことで、本作の面白さが増幅されていると云えると思う。繰り返しで云えば、どこからか聞こえて来る、古い歌謡曲みたいな音楽の使い方も面白い。また、映画に関係する人たちを描いているにも関わらず、映画製作に関するプロットや、過去の既存映画に関する言及が一切ない、という割り切りも、ホン・サンスらしいなぁと思う。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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