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[コメント] カノジョは嘘を愛しすぎてる(2013/日)

これは紛れもなく大原櫻子の声についての映画だ。登場した際の第一声、それは声にもならない叫びのようなものだが、既にこの時点で、決定的な声の持ち主である、ということを丁寧なエフェクトをかけた音として観客に提示する。その後、彼女の歌声は中盤まで隠蔽されたまゝ、
ゑぎ

 反町隆史演じる音楽プロデューサーや楽曲を提供する窪田正孝から「たからもの」と呼ばれるのだが、主人公の佐藤健と同じように観客も彼女の歌声を聴くことができず、大いに焦らされる。そして最初の歌唱シーンとなる。これが、『スタア誕生』のジュディ・ガーランドが場末のホールで「The Man That Got Way」を歌うシーンのようだ、と云えば勿論大げさ過ぎるのだが(それに、大原櫻子の歌唱は既にテレビやラジオで既知ではあったのだが)、やっぱり大いに感動する。これは決定的に彼女の声についての映画なのだ。

 そして音の演出はヒロインの歌声だけでなく、窓を閉め切った自動車の車内の音を無音で処理したり、或いは録音スタジオのガラスの向こうだとか、ヘッドフォンと云った道具立てを使って、かなり意識的な音を隠す演出がされていて面白いのだ。また、カメラも殆どのシーンでゆらゆらと漂うように移動していて凝っている。特にそれが佐藤健の低回する感情とシンクロした画面として造型されているシーンで効果を上げる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)サイモン64[*]

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