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[コメント] 第十一号監房の暴動(1954/米)

暴動の首謀者はダン。ネヴィル・ブランドが演じる。珍しく比較的まともな役だ。見る前は、どうせ彼が一番狂った役だろうと思っていたが、勿論、暴力的な性格だが、まだインテリジェンスのある役なのだ。
ゑぎ

 一番クレイジーなのはダンの相棒のカーニー−レオ・ゴードンだ。特に看守の一人スネイダー−ウィット・ビセルを恨んでおり、何をしでかすか分からない怖さがある。そして、途中でダンが頼りにする、大佐と呼ばれるロバート・オステルロッホ。ダンから囚人の待遇改善の要求書を書いて欲しいと頼まれる。彼が囚人の中では、一番理知的で、観客が応援したくなる役柄かも知れない(勿論見る人によるだろうが)。あともう一人、カーニーの子分のように、いつも側にいる男を若きダブス・グリアがやっている(細い!)。この人は後の「大草原の小さな家」の牧師さんだ。

 まずは暴動の初っ端、ダンやカーニーが、看守を一人また一人と確保し人質にしていくシーンの淡々とした客観描写がいい。その後、各居室のベッドや荷物などが1階通路に放り投げられ、大混乱の様相を呈する。この混沌の画面造型も見事なものだと思う。2階から投げられるパイプなどが、下の囚人に当たらないかも怖い。そのうち、ダン−ブランドがテーブルの上に乗り、仕切り始める。

 そして刑務所長−エミール・メイヤーが登場すると、これがとても貫禄のある、と同時にリベラルでもある造型で、やっぱりこの人が主人公なのね、と思ってしまうのだが、滑舌の悪いダミ声がいい。官憲側の人物では、知事の代理のような理事という役職のフランク・フェイレンも到着する。この人は刑務所長と対比するような憎まれ役を分担する。ダンたちとの交渉シーンでは、カーニーがナイフを投げ、理事の肩に刺さるのだ。このような交渉シーンは何度が出てくるが、その度に、監視塔に、扉の開閉を指示する所長がカッコいい。

 十一号監房に倣って、他の監房も暴動が起きると、州警察も出動して対峙するという場面になる。催涙弾が放たれ、囚人一人が撃たれる。報復として、人質にした9人の看守のうち一人を殺すと云うダン。カーニーはスネイダーを殺そうと云う。囚人たちも一枚岩とはならず、仲間割れを起こし、ブランドは、別のグループの囚人たちに殴られるというこの展開も面白いところだが、あくまでも、簡潔に描くのがシーゲルらしい。ブランドが負傷するとカーニーがリーダーになる。クライマックスは、監房の外側にダイナマイトが仕掛けられる音がし、その内側の壁には、看守たちが縛られる。反対した大佐もだ。さてどうなるかという展開だが、このスリルの醸成も良く出来ている。アクション演出は全体におとなしめでも、タイトな演出はシーゲルらしい。ただし、収束は案外驚きの無いも の、というか、そりゃそうなるわな、というもので、できれば、リアルでは無くなっても、ネヴィル・ブランドがもうひと暴れしても良かったんじゃないかと思った。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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