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[コメント] 善き人のためのソナタ(2006/独)

疲弊した社会主義的センスにひびが入る瞬間。その割れ目から溢れ出す、人間の真の感情。
まー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







社会主義的センス、あるいはドイツ的合理主義、つまり、画一的で色彩の少ない調度品や、粗末だが丁寧に扱われ整理整頓されている家具や、重々しく仰々しい盗聴装置、ごついヘッドホンなど。

官僚も捜査官も芸術家もみな一様に生真面目で、それぞれの義務や欲望やイデオロギーにしがみついて生きているが、空間の狭さに息詰まり、どこかに捌け口、通風孔を求めている。

風穴を開けたのは、主人公の芸術を欲する強い心だった。

体制を美談が瓦解していくという話は感動的だが、それよりも面白いと思ったのは、盗聴する者とされる者たちが壁、というか屋根?を隔てて同一の空間で、息づき効果を与え合う構図。

盗聴する側の優位性、される側の劣勢感をものともしない奇妙な関係が面白かった。

ラストカットもいいけど、その前の、書店を横切り戻ってくる「間」が完璧。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)おーい粗茶[*] たかひこ[*]

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