千尋の両親は、思いやりの無い、モラルに欠けた大人の象徴のように描かれている。転校を寂しく思っている千尋への冷たい態度、細い山道での危険な運転、食欲を抑えられない慎みの無さ、等々。あんな大人は世の中にいっぱいいるけど、自分の親があんなだったら、子供はさぞかし悲しく頼りなく心細い気持ちになることだろうと思う。冒頭のシーンの数々はそんな千尋の不安感がよく現れており、惹き込まれて観ていた。

で、そんな悪行の報いか、両親は豚になってしまう。このシーンはオソロシかった。思わず「うげっ」とか声を上げてしまいそうになるくらいショッキングだった。千尋のショックも計り知れないものだったろうと思う。

ところが、そのショックからなかなか立ち直れない僕を尻目に、映画の中の千尋は健気にもあちらの世界に順応し、両親を元に戻したい一心で懸命に行動していく。

なんだかこのあたりで、鑑賞している僕と作品の距離感がスススーっと離れてしまったような感じだった。決して退屈はしないんだけど、なんか遠くの方から物語を眺めている感じ。「泣いた」という人が多いおむすびのシーンも「そう言えばそういうシーンあったなあ」という程度しか思い出せない。ラスト、千尋と両親が元に戻ることができたのも何故なのかイマイチ理解できない。相変わらず両親は傍若無人そうだし、千尋は母親にくっついて歩いている。何が変わったのか？？

僕にとっては作品そのものよりも皆さんのコメント読む方が面白かった。千尋といっしょになってあちらの世界を冒険した大人の方もたくさんいらっしゃるんですね。残念ながら僕は既に「何か」を失ってしまっているようです。ま、それはそれで仕方の無いことだし、そのことを悲しむつもりも無いんですが。。