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[コメント] 岸辺の旅(2015/日=仏)

優しくも未練がましい人間たちの縮図。かれらは黒沢清という演出者の瞳になんと好意的に眺められ、浄化されてゆくことだろうか。ひとびとの執念を断ち切りやすらかに終わらせる男として、浅野忠信の自然体はほんとうに似つかわしい。そして肉体に固執してやまない深津絵里すらもなお、その見苦しさを監督に愛されていることが判る。そして亡霊描写の品性も評価できる。
水那岐

敢えて生々しいホラー的料理をしなかったのは正解であり、演出には抑制が効いていた。時としてフルオーケストラの伴奏が嫌味に作用するシーンがあったのは惜しまれるが、例えば小松政夫の不在を示す空虚な屋内の描写は、得意の恐怖描写に移ろうとして懸命にブレーキをかけたことが理解でき、それは不要な感情を醸し出さなかったいい意味の自制と納得できた。

これはセックス描写も同様であり、自分の枠を踏みはずしたと監督の自嘲する後編での情事にもこれ見よがしな点はなく、あくまで自分の矜持を貫くために手段を講じたのがあのフィルムである、と納得できるものだった。エロティシズムを服の留め金を外すことで表したのはこの作品には正解だったろう。

(評価:★4)

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