まず夏希だ。『時かけ』のヒロイン・真琴は魅力的だったのに、今度のヒロインは二回冷凍して二回解凍したマグロみたいだ。うまみが感じられない。この期に及んでフィアンセごっことか、それもまたわかってやっているとでも言うのか。

それから、怪獣映画好きの私からすると、フィクションだから街中に出現させることができる怪獣をどうしてこうネット内などという、一種どうでもいい空間にしか出現させられないのかと、フラストレーションがたまる。まあ、それは個人的な感想か。

街中に怪獣出されても信じられない方々が『ぼくらのウォーゲーム！』を持て囃した。「怪獣という形骸を与えられた世界の破滅との対峙状況に演出でリアリティーを与えた」みたいなご意見を煙たく思う自分がいた。そんな大したものとは思えないというか、そこが最重要なわけじゃないんだけどなあ……と呟くこのレビューは、つまるところただの私怨でございます。

とお断りした上でさらにぼやくんですが、この映画、AIに、脳内空手に、落ち物クライシスに、と大きなモチーフはもちろんのこと、古い家屋にスパコン持ち込みとか、その辺の小ネタに至るまで目新しいモチーフが見えたと言えば、せいぜい花札ぐらいで、そういった既存のモチーフが有機的に絡み合っているわけでもなく、“対峙状況”の演出が上手くいっているようにはとても見えない。

「ちょっと言えないところ」などとしたり顔の自衛官を見ると、底が浅いというか、立脚点は意外と幼稚なところなのではないか。花札も要はカードバトル？　まあ、でも、それは、こいこいの語感を含めて面白いかったです。

田舎の大家族をモチーフにして、そこをつつくくだりが多々ある。このままネト社会が進めば、田舎のじっちゃんばっちゃんも情報化されるかわりに、それに頼りすぎちゃってＡＩとか暴れちゃうよ、そうなったら家族の絆が命綱だよとそういうことですか？

でも、この映画、受けているんですよね。それがどこかに受けている以上は、監督は狙いを定めてそれを撃ち抜いているのでしょう。その的が自分にはまったく見えない類いのものであるというのは残念ですが、趣味が合わないとしか言いようがない。