[コメント] 銀河鉄道の夜(1985/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
原作は自分にとって(だけでなく多くの人にも)最も大切な宝物です。
ジョバンニは自分そのもののような気がして、抵抗のあった映画化でも作品に引き込まれてしまいました。いなくなった父親、病気の母親、嫁いでいったきょうだい、自分の気持ちが言えないジョバンニ。誰にも伝えられない想い。
でもどうしてジョバンニは自分の気持ちを言えなくなってしまったのでしょうか?もしジョバンニに「君の正直な気持ちを言ってごらん」と聞いたら、「僕はさみしい」と真っ先に叫びたいと思う。しかし、それはお母さんを悲しませてしまうから、絶対に言えない。感情を押し殺し続けると、そのうち素直な気持ちを言葉にできなくなってしまいます。すると周囲の人たちとも心を通じ合えなくなって、ますますひとりぼっちになってしまう。
そんなジョバンニが乗った銀河鉄道で、たった一人の友達 カンパネルラを見つけた時、どんなに嬉しかったことでしょう。透明なまでに純粋なカンパネルラ。特別な名前。心の中にしかいない親友。誰もが憧れる大切な友達。ふたりで出会うエピソードのひとつひとつも美しく永遠です。
ジョバンニが「ほんとうのさいわい」について考えるのも、カンパネルラと一緒にいたいからではないでしょうか?ふたりでみんなの幸せ(人間や世界だけでなく、文字どおり銀河=宇宙全部の)を祈り、そのために力を合わせて生きる。カンパネルラは、そんなことまで考えさせてくれるような少年です。だから銀河鉄道から帰ってきたジョバンニは決意します。自分の命をどのように使うかを。それは「みんなのさいわい」のために生きれば、再びカンパネルラと会えると信じているかのようです。
今の自分は“バルドラの蠍”です。無意味に生命を使う毎日。きっと“そのとき”あの蠍のように後悔してしまうに違いありません。でも赤いめだまの美しい星になるより、カンパネルラと一緒に銀河鉄道に乗りたい。本当にそう思います。でもきっと思っているだけでは、カンパネルラのいる銀河鉄道には乗れないでしょう。
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