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[コメント] 食人族(1981/伊)

やってることは見せ物小屋と変わらないインチキなんだけど、そのインチキを面白く、しかも意味ありげに魅せるテクニックは大したもの。シーン一つ一つが「客を喜ばせる」ためだけに存在していて、その意味を考えると自分がバカに思えてくる。
Myurakz

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







子どもの頃、お祭りで「ヘビに育てられた美しきヘビ少女!」っていう見せ物小屋を見つけました。派手な看板にはデカデカとウロコ顔の美少女の絵。つられてつい木戸銭払って中に入ると、そこには蛇を持った真っ赤なビキニのお婆ちゃんが一人で佇んでました。目が合ったらニヤリと微笑まれちゃったりして、もうどうリアクションしていいのかこっちがわかんないの。

この映画を観て思い出したのはまずそれ。ラストの(しかも実は大したことない)人食いシーンに辿り着かせるまであの手この手で客を引っ張ってるっていう、はっきり言っちゃえば中身のない映画。ただその「あの手この手」が非常に巧い。「文明批判」の匂いを漂わせて客が観に来ることへの言い訳をつけさせてあげたり、動物のグロを出すことで何となく納得させたり。

エロスの部分も笑っちゃうほどサービス精神旺盛。撮影隊の意味のないSEXシーンはまだいいとしても、教授が水浴びをしてるところに原住民が女ばっかり集まってくるシーンなんてサービス以外の何者でもない。しかもみんなしてチンチン触ってくるし。意味がわかんない。

「低予算で客の足を劇場に運ばせ、何となく納得させて帰らせる」という点で言えば、素晴らしくプロ意識の高い映画なんじゃないかと思いました。「これはウケるぜ!」と思われるのもスゴいバカにされてる気がするんだけど、実際下らないと思いながらも飽きずに観ちゃったわけだしね。

ただ、亀のシーンはそれほど気にならなかったんですが、小豚が蹴られて「ピギー!」なんて鳴きながら撃ち殺されるシーンが、どうにも可哀想でヘコんじゃったんでマイナスです。恐らくあれも本当に殺されてる。やっぱり豚は哺乳類だから「可哀想」に感じるのかな。でも亀がセーフで豚がアウトって、そのままカニバリズムの解釈の相違と同じなんだよな。豚はセーフで人はアウト、っていうのと変わらない。そんなことを考えさせられたってことは、やっぱり僕もしっかりハマってたってことなんでしょうかね。

(評価:★3)

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