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[コメント] リトアニアへの旅の追憶(1972/米)

 「花はどこへ行ったの?」
にくじゃが

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 感傷的なエピソードは極力避ける。やろうと思えば、収容所の生活とか、いかにして故国から脱出したかとか、いくらでも悲惨なエピソードをあげられるだろう。でも、やらない。あくまで、母国への、故郷への、追憶。異国での移民たちの生活、故国への旅、ウィーンでの出来事。そのみっつ。特に何も起こる訳じゃない。追憶だから。

 自分の心の中の故郷を追い求める旅。引き離されたら、考えずにはおけない。あこがれだから。自分の中でいつまでも変わらない、それは理想の故郷のはず。「記憶でつくられた現実」。一種の現実逃避。でもそこにだって現実はある。花が少ない。トラクターが導入された。ウィーンで、今度は現実の子供たちを見る。戦争はもう終わっていて、何もなかったみたいにみんな明るい。でもここも花が少ない。ラスト、火事を見かける。自分の中の戦争、戦禍がわき起こる。でも、今の自分は遠くから眺めているだけ。現実世界では、ただの火事。現実世界の自分は、それを見物している。現実に戻ってくる。でも寂しい。もの悲しい。忘れられない。

 も一つ、「火」ってのは「近代化」を進めるために必要だったのかもしれない。ラストの言葉にもそんなのあったし。でもそうすると、「花」がなくて、「火」。近代化を推し進める限り、また、戦争が起こるのかもしれない。まったく「いつになったら、懲りるのでしょう?」

 「花はどこへ行ったの?」は、あのマルレーネ・ディートリッヒ様も歌ってらした曲。相当古い唄だから、大丈夫だと思うけど。もしだめなら、至急お教えください。お願いします。

(評価:★5)

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