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[コメント] フレンジー(1972/米)

待った待った待った!俺の中のヒッチコックランキング2位だ。全く期待していなかったんだが滅茶面白いじゃん!
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♯ちなみに1位は『サイコ』。

実はワタクシ、ヒッチコックは大の苦手。現在日本で最も多くの作品を簡単に観賞できるであろう監督ということもあり、20本以上消化した。自分の中でも、監督別だと一番観ている。ところが自分がシネスケに採点した彼の作品の平均点数は恐らく★2点台だろう。50年代の有名作品群は全く受け付けない。

自分の好みではないもんだから、彼の知名度は由々しき事態だと常々思っているのだ。身のまわりでも現代ロードショーぐらいしか観ない、クラシカルな映画には決して興味を抱かない人間でも何故か、ヒッチコックには触手を伸ばすのである。「あんたら、ヒッチコックだけが昔の映画を撮っていた訳じゃない。他の監督の面白い作品だって山のようにあるのに。」と叫びたい気分でいるのだ。

実際に行動していることといえば、昔の作品を浴びるように観て(数撃てば当たるからね)、自分にとってのではあっても、素晴らしい作品を「発掘」している。そしてたまに頑張ってコメントを書く。あまり効果はないのかもしれないが、俺のシネスケ内での役割だと思うこともある。なんて尊大なことをいっているんだ・・・(恥)。

思いっきり脱線してしまってすみませぬ。

そんなこんなでヒッチコックのいわゆる一線級の作品が気に食わないのに、「フレンジー」は彼の力が衰えたとされる(?)晩年の作品ということも手伝って全然期待していなかったのだ。

ところがどっこい(古い)。

抜群に面白い。俺が思うに、本作品は「ヒッチコック的」ではないのだろう。彼の衰え(?)が逆にプラスに作用したのだ。例えば巧く編集すれば省略できそうなシーンがいくつもあった。そこを愚直に、つまり奇抜な手法を駆使せずに撮影している。面白い題材を分りやすく作り上げている。そこが帰って素直な好感に繋がったのだと思われる。

ヒッチコックというよりもむしろウィリアム・ワイラーの作品のようだ。あまり観ていない方には判りにくくて申し訳ない。でもワイラーだったら『コレクター』のような作風になってしまうのかな・・・。と思いつきで書いてしまった。ここは飛ばしてよいです。

蛇足ついでにこの作品、結構ヌードがありますね。ハリウッドの巨匠達も60年代後半になると次第にこんなサービス(?)をしてくれます。ワイラーの「コレクター」もそうだしワイルダーの「お熱い夜をあなたに」もそうだ。以上つまらない豆知識でした。

作品の致命的な粗はいくつもある。一つ目は前半で提示された主人公のちょいDVっぽい性格が全く作品に関係のなかったこと。もう一つは既に述べた、あまりにも素直すぎる演出。決して出来の良い作品ではない。警察幹部夫妻のコメディ的なやり取りも中途半端な力の入れようだ。

それでも面白いのだ。多分バランスが絶妙に良かったのでしょう。それと異常心理に基づく犯罪ってのも興味深いか。俳優は誰一人として知らなかったがそこも逆に新鮮だった気もする。異常心理を掘り下げる必要はなかったのだろう。

ということで、ヒッチコックを知らない人間に作品を薦めるとしたら「サイコ」とアンチ・ヒッチコックの俺もギャフンといったこの作品だな。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ガブリエルアン・カットグラ[*]

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