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[コメント] トロン LEGACY(2010/米)

SF的目新しさは乏しいものの、コスチュームやセット含め、まずまずのヴィジュアル的充実度。ジェフ・ブリッジスのジェダイ・・・じゃなかった禅マスター(これも違うと思うが)も、まったく適当で胡散臭い限りなので大いに許す。(2011.10.31)
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 グローバルな支配と利益を追い求める巨大企業とそれに対抗する無料共有の論理とか、冒頭からなにやら世相を主題に取り込むつもりかと思いきや、とくに本筋に関わるわけでもなく、跡取り息子という、ちょっとだけ同年の『インセプション』を思い出させる設定も、見慣れた父子物語に。

 親父に外の世界の様子を聞かれて、「金持ちはますます金持ちに、貧乏人はますます貧乏に」とか格差拡大を嘆かわしげに口にしておいて、その現実世界に戻るなり、「今からきみが会長だ、ぼくも会社に出る」とか、「ごめんごめん、27歳までゲームやってて会社に来るのが遅くなっちゃったけど、ボクの社長室こっちだったっけ?」といわんばかりの、これぞほんとうの重役出勤(いえ、約束した時間は朝だったかと思いますが)。親の七光り持ち・資産持ちはフラフラしてようが警察のお世話になろうが、そうそう没落しない、その気になればいつでも表舞台に返り咲ける、世界はやっぱり彼らのもの、という、ある意味で時代にふさわしく力強いメッセージを受け取りました。

 「フロンティア」というアメリカ的な言い回しがフリン(ジェフ・ブリッジス)とクルー(同じく)の壇上の演説のなかで反復される。デジタルのフロンティアの名のもとに生み出された技術が成長を続けるうちに、いまや現実のほうが征服されるべきフロンティアになってしまったわけだ。しかし、そのデジタル世界で繰り広げられているのが、全体主義的独裁者でありレジスタンスであり、という現実世界の陳腐化した戯画でしかないので、征服を突き動かす魅惑やそこに生まれる恐怖の予感をいまいち欠く。

 欲を言い始めれば、アクション・シーンもストーリー展開そのものも、基本は単純なわりに、どこで何が起きているのかいまいち説明力が欠ける気がするし、もっと些細なレベルでのガジェット偏愛を見せて欲しかったし、ラストの日の出は印象に残らず蛇足と感じる(「見せたいものがある」と語られるだけで終わったほうがよかったろう)。

 と、語り始めるとやたら悪口めいてしまうのだけれど、私はおおむね満足。期待以上のものがたいしてあったわけではないが、期待通りのものはほぼあった、というところ。

 期待以上といえば、オリヴィア・ワイルド。肩だけちょい露出とか「再起動」待ちとか、フェティシズムを抱かせつつも健康的なヒロイン。本棚の前で瞳がキラキラ、お気に入り本抱っこは、健康的過ぎてなんだかまた別の種類のフェティシズムを誘う。食卓のシーンでの、ぎこちなく向かい合う再会直後の親子のあいだでカラカラと笑ってから気まずそうに黙り込み、目を左右にクリクリさせて二人の顔をうかがう、懸命とも無邪気とも受け取れるしぐさも、愛らしい。「グリッド」の外へと出るところでひょっとするともしかしてちょっぴりかすかにヌードなんか拝めるのではと思いきや、あ、そうだ、ディズニー映画でした。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus 3819695[*]

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