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[コメント] 靖国 YASUKUNI(2007/日=中国)

この映画の一番おもしろい所は人間であって、世間が騒いでいる所に私はあまり関心がないのであって。
SUM

まぁ、特に終盤に写真をつなげて、いわゆる「疑惑の写真」も含めて日本軍の行為と靖国を結びつけようという演出は確かにあって、その部分の正確さや、それをおいといても「反日」なる批判は出るのだろう。でも、それはこの映画の一部でしかない。

この映画の中心は、8/15日という特別な日に靖国神社前で繰り広げられる、主に右翼コスプレな人々と、刀鍛冶の二つである。確かに、靖国神社の存在や政治家の参拝の是非といった点を、これらのこととひもづけて描いているといえばまったくそうなのだが、描ききっているかというと、そうでもなくて、描かれている人間の様子はまったく、率直で人間観察としては非常にすばらしいまなざしなのである。

確かに、この映画を見て靖国問題を論じるのもいい。が、もちろんこの映画は靖国問題の一部しか描いてはいない。この映画の演出には、冒頭に書いた以外にも「反日」という意見が出るのに違和感のないものが混じってはいる。が、同時に右翼でも「別に反日じゃないじゃないか」という声も少なくないのが事実であって、まさにそういう映画なのだ。

この映画は、何がおもしろいってドキュメンタリーとして人間模様を描いた所にあるわけで、商業性が高い映画とは思えない。従って「つまらない」という意見も多数聞くがまったくそれに違和感はない。

たぶん、政治的問題提起という意図を持ってとられた映画であることは間違いない。確かに、靖国を描いたというそれだけですでにそれを達している部分もある。しかしながら、この映画が映像作品としてすばらしいのはそこではなくて、人間が描かれた映画だということに他ならない。

まぁ、賛否両論、作品の出来映えの是非、いろいろあるだろうが、これだけ話題になった作品であるが、論じるなら、まず見てから言え、というのははっきりと言える。いろんな意味で特殊な映画である。この映画の以前と以後は歴然とあるだろう。いろんな意見はあろうが、見てから話をしようじゃないか。

余談だが、上映中止騒動については色んな所で話題になっているけど、大概断片しか報じてないので、『映画「靖国」上映中止をめぐる大議論』を読むといい。言論の自由という切り口でこの問題を捉えるのが正しいのかは実に微妙な所だが、どちらにしろ、この映画の上映中止問題を中心に見えてくる現在の日本という意味ではこの本は面白い。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)蒼井ゆう21[*] IN4MATION[*]

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