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[コメント] ホビット 竜に奪われた王国(2013/米=ニュージーランド)

正しく「指輪」のボーナストラック
ペンクロフ

ボーナストラックといっても悪い意味ではなく、ボーナスなんだからむしろ嬉しいのである。森のエルフであり殺人マシンであるところのレゴラスさんや新キャラの女エルフなんて、そもそも原作に出てきませんからね。原作に出てこないキャラクターを物語の一方の軸に据えて縦横に動かすに至っては、そりゃーもう普通にオリジナルのハイファンタジー作品だろうと思う。オリジナルでも面白いから文句はないんだけど、「指輪物語」三部作とは映像化の方法論が大きく違ってきているのは明らかだ。

思えばこの「ホビットの冒険」、どれほどよく出来ていても映画の世界においては指輪三部作のボーナストラックである事実は変わらない。長大な原作を可能な限り忠実に映画化した「指輪」に比べ、淡々と叙事に徹して面白くない「ホビット」原作を映画化するにあたり、ピーター・ジャクソンは思うがまま、自由自在に絵筆を振るっている。「指輪」映画化時の原作尊重の姿勢は全然見られない。自分は、その方がいいと思っている。あの原作は、そのままじゃあどうにもなりません。さらに言えば「指輪」映画化で得た絶大な信用あればこそピージャクも「ホビット」で大ナタを振りまわせるわけで、その意味からも「ホビット」は「指輪」のボーナストラックなのである。

どこをとっても文学していた「指輪」と違い、「ホビット」は観客を今楽しませることに徹している。観てて思うことも全然違う。「ホビット」を観ていると「危ない!」「怖い!」「高い!」「凄え!」「強え!」など、極めて原始的な感想、即物的な快感しか覚えない。そしてそれが、とても楽しいのですね。最終的にアカデミー賞を獲った「指輪」は映画史に残る名作だと思うが、「ホビット」はたぶんそうならない。今の観客たちを目一杯楽しませて、時とともに忘れられてゆく映画だろう。それはそれで、とても立派なことだと思う。三本目もきっとはっちゃけることでしょう。楽しみです。

(評価:★4)

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