[コメント] 漂流(1981/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
時折流れる気の抜けたフュージョンみたいなエレクトーンみたいな音楽が、オレはなんでこんな映画を観てるんだろうという気にさせる。もう完全にボケている。
遅れて漂着した一団の中に渡瀬恒彦がおり、オイオイヤベーやつがいるぞと思ってたら案の定の展開。渡瀬は人のかたちをした災厄だ。
鳥島にいるのはアホウドリの大群で、この映画が作られた時すでに特別天然記念物である。しかし北大路欣也は史実なんだから仕方がねえとばかり、ウジャウジャいるアホウドリを棒でバンバン殴り殺す。作り物ではなく、生きてる鳥を殺してる。なんだこれ、映画撮るためにこんなことが許されるのかとびっくりしたが、調べてみると仔細があった。無人島である鳥島は当時も現在も立ち入り禁止で、研究目的などで東京都から特別の許可を得た者しか上陸できない。つまりこの映画のロケ地は鳥島ではない。鳥もアホウドリではなく、アホウドリにそっくりなシロカツオドリという鳥だ。シロカツオドリが生息するスコットランドの島の斜面で、わざわざロケしている。つまり欣也はわざわざスコットランドまで行って、棒で鳥をシバキ倒しているのである。まったく映画屋というのは、何をしでかすか判らないたいへん危ない人たちだと思います。ま、当時の常識としても映画のためにアホウドリは殺しちゃまずいがシロカツオドリなら全然構わない、とはならんと思いますが。
事情あってオレは2000年代に、70年代から何度も鳥島を訪れているアホウドリ研究の第一人者、長谷川博教授(東邦大)にお話を伺う機会があった。大学受験もしたことのないオレの如きごろつきが、世界有数のアホウドリ研究の権威とお話させてもらうのは実にもったいない、光栄なことだった。あのねえ、先生によると、鳥島には八丈島から船を雇って行くんだけど死ぬほど遠いそうです。船はメチャクチャ揺れるんだって。湾も入り江もないのでゴムボートで岸壁に近づいて、ジャンプして岩に飛び移るしか上陸の方法がない。着いたら着いたで研究で数週間働き通し。テントに寝袋、水もメシも最低限。風呂なんかねえ。げっそり痩せて東京に戻る。そんなことを毎年のように。先生、アホウドリがメチャクチャ好きなんだそうです。あんな美しい鳥はいないって。『漂流』を観て、そんなことを思い出したねえ…
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